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    川崎沼田クリニック

怒りの矛先はどこへ : 依存とすり替えの心理

 
 
メモを取る様子
 

はじめに

「仕事が嫌だ」と言いながら動けない人がいます。本当に問題は仕事なのでしょうか。怒りの本当の向き先が別にあるとき、人はそれを無意識にすり替えます。依存と怒り、そして現実回避の関係を考えます。

怒りには本来の「予先」がある

「仕事が嫌だ」「会社が合わない」と繰り返し言いながら、現実には動かない人がいます。周囲から見ると矛盾しているように映りますが、心理的には一定の筋道があります。

怒りには本来の「予先」があります。しかしその対象が危険であったり、失うことが怖かったり、向き合うと現実があまりに辛かったりすると、人はその怒りを別の対象へと移し替えます。これを私は「怒りの予先のすり替え」と呼んでいます。

安全な対象への感情移動

たとえば、親への怒りが処理されていない場合。本来は親との関係に由来する感情であっても、その親が弱っていたり、逆らえない存在であったりすると、怒りを向けることができません。すると、その怒りは安全な対象へと移動します。仕事、上司、会社、社会制度などです。

「仕事のせいで辛い」と感じている間は、本当の怒りに触れずに済みます。仕事に没頭することで親への怒りを感じないようにし、さらにその没頭している自分の状態を「嫌だ」と言う。ここにも二重のすり替えがあります。

スマホを触るドクター

依存構造と動けなさの関係

依存の構造もここに重なります。依存対象を壊してしまうと、現実が見えてしまう。だから壊せない。だから動かない。「嫌だ」と言い続けながら、そこにとどまり続けるのです。

転職一年目は楽だったが困っていた、という話も象徴的です。楽になると、抑え込んでいた怒りが顔を出すことがあります。忙しさや困難さは、感情を感じないための防波堤になることがあるからです。やることが多い状態は、実は心を守る機能を持つことがあります。

怒りの正体を見つめ直すということ

問題は「仕事が合っているかどうか」ではなく、「怒りの本当の予先はどこか」です。ここを丁寧に扱わないまま環境だけを変えても、怒りは別の場所に移るだけです。会社を変えても次の会社が「嫌な会社」になり、相手を変えても次の相手が「問題のある人」になります。

怒りの正体を知ることは、誰かを責めることではありません。むしろ自分の感情の所有権を取り戻すことです。「なぜ私はここにとどまり続けるのか」「なぜ本当は動けるのに動かないのか」。この問いを持てたとき、依存対象との距離がわずかに生まれます。

怒りの予先を見つめ直すことは怖い作業です。しかしそれは、同じ構造を繰り返さないための第一歩でもあります

 

院長プロフィール

川崎沼田クリニック 院長
日本精神神経学会 専門医

沼田真一

平成12年、秋田大学医学部卒。
同年東北大学医学部精神科に入局後、東北会病院(仙台)嗜癖疾患専門病棟にて併行研修。
平成14年、慶應義塾大学精神科医局に移り、同時に家族機能研究所・さいとうクリニック(東京・港区)で研鑽する。
平成16年、財団法人井之頭病院(東京・三鷹)で、アルコール依存症専門病棟担当医。
平成17年よりはさいとうクリニックで、アルコール依存・摂食障害・DV(虐待)・ひきこもりなど家族問題と精神疾患に従事する傍ら、産業医としての診療や各種のハラスメントなど組織内の人間関係問題に対する相談業務を担う。

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