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こころ、こんにちは。ブログ

    川崎沼田クリニック

「取引コスト」と「プロスペクト理論」を簡単に解説(後)

 
 
スマホを触るドクター
 

今回の「プロスペクト理論」を簡単に解説記事の後半は、取引コストの高さが、現在や将来の人間関係上にどのように影響するかを示します。キーワードは「また同じことが起こってたまるか」という心理抵抗です。

「報われない私」の一掃と「プロスペクト理論」

さて前半の取引コストの話に戻します。取引コストが高いこころの状態とは、「報われない中で努力とする時間が許せない」ということになります。これは「待っていたら手のひらをかえされてしまった」など当事者にとって想定外のトラウマ体験が影響し、「先々は何がどうなるかわからない」という思いが優先的に強くなっています。その結果一見「目先の利益を追う」ように見えてしまうことで、現在の人との間に新たな軋轢が生まれたりします。

当事者の過去のトラウマ体験がその後の人格に影響を及ぼす場合は、一覧で簡単には示せません。しかし人間関係上においての「保証された体験」の不足、納得しないまま一人で受け入れた被害者体験は、以後において「孤独感を味わわされる」思いを強化する方向に繋がります。

憂鬱 少女

「~してくれない」という口癖

取引コストが高じると、猶予自体が許せないので、最初の動きすら無駄になるという思いが大きくなり、「先に周囲や相手がもたらしてくれたら私は動く」と願うようになります。ちなみに例えば神経症あるいは対人恐怖に伴う「ひきこもり」は、決して社会的に動かないというわけではありません。私が動くには先に相手が私のために動いてくれていることが条件となっています。

最近はSNS中傷や前述のカスタマーハラスメントなどが話題となって対策も取ってきていますが、労力を出して損をしたくない、自分に向かってくるような損をしたくないという、ある意味限りなく取引コストを高くとりたい(労力を最小限にしたい)中での関わりならば、むしろ積極的に行っているという結果です。

一方リアルな社会での普段のやり取りの中でも、「○○が~してくれない」という言い回しがあります。当事者に周囲に働きかけずにして訴えている場合は、過去のトラウマの影響を推測していきます。

もちろんこのように訴えている当事者のこころの主張は、「私は昔あの人達相手にいろいろやったのだから、いまは目の前の人にやらなくても報われて当然である」という、相手をすり変えての自分の言動の合理化です。このように目の前の相手とは違い、別のところで過去の被害体験とリンクさせて帳尻あわせをするという防衛機制になります。社会においてこのような合理化は散見されるとは思いますが、時に「とばっちり」「八つ当たり」と捉えられてしまう由縁です。

以上、人間関係の軋轢と取引コストの高さ、及びトラウマ体験との関わりを示しました。一見周囲は面倒に感じるかもしれませんが、当事者にとってはかつてのことから心の平穏を保つため、必死に折り合いをつけようとしている心の姿勢だということを慮っています。

最後に

川崎市のメンタルクリニック・心療内科・精神科『川崎沼田クリニック』では、トラウマでお悩みの方の診察も行っております。下記HPよりお問い合わせください。
https://kawasaki-numata.jp

 

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沼田真一
川崎沼田クリニック 院長
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