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こころ、こんにちは。ブログ

    川崎沼田クリニック

ハラスメントが求めるもの (2)-パワーハラスメント

 
 
コーヒーカップ 2つ
 

表題にあわせ、まずは旧来のパワーハラスメントに焦点を当てて述べます。この項の後半は、加害者が無意識に求めているものを、被害者側の視点をあわせて考えていきます。

〇「本当に折り合いをつけたい相手ではない」からパワハラは続く

まず前提として、パワーハラスメントが依存症として繰り返される理由は、当然行為者である加害者側の事情に潜伏します。これはいじめと同様ですが、基本的に「目の前の事項や出来事とは関連が薄い」ということが大切です。

アディクションの基本は「江戸の敵を長崎で討つ」という理想をもつことですから、パワハラやいじめの加害者は、被害者となる目の前の相手ではなく、「別の場所で抱えている現在の鬱憤」または「過去に釈然感のないまま受け取らざるを得なかった出来事」に対して払拭をはかりたいという願望が由来しています。

従ってこれをパワハラやマウンティングなどの行動嗜癖行為に照らし合わせれば、相手に対するこれらの行為とは、本当は目の前の人ではなく「別の人にやりたい」となります。しかし様々な事情でそれが出来ない、または出来ないと思い込んでいることから、叶いそうな目の前の人を相手にして代用しているという流れです。

昔から存在する職場での男性上下関係でのいわゆるパワハラは、「先輩から言われたことを私はかつて黙って飲み込んだ、だからお前も飲み込め」という平等性の主張です。現在の攻撃者の要素は「そのようにならないと割に合わない」です。私はこれを「取り返し願望」としております。ここで職場の先輩にされたことなら加害者の行為の由縁を推測できますが、それこそいじめや家族内のぎくしゃくなど、他人である被害者には加害者の取返し願望の由来が分からないことがあります。

パワハラ加害者の事情(過去の過去)を見つめる

従って依存症の治療は、いつも「過去の過去」を見つめていくことになります。「どういうわけで加害者はそのようなことをする経緯に至っているのか」「きっとこのように考えているだろう」というストーリーを被害者や加害者と考えながら、その人にとっての新しい対応を見つめていきます。

もちろん他人なので、被害者には加害者側の本当の心情や事情は捉えられないことも多くありますが、加害者の事情を見立てる「加害者解釈」をしていきます。ちなみに多くの場合パワハラの加害者は、”俺はこんなはずじゃなかった”というのがあります。本当はこの不平不満を誰に訴えたいのか、親なのか世間なのか…などが潜伏しています。

いじめ 加害者 被害者

なぜパワーハラスメントは繰り返されるのか

今回はパワーハラスメントを例にしていますが、このように行為が 繰り返される大きな理由は、上述のように「本当に言いたい相手ではない」からです。いくら加害者が被害者に対して大きな態度に出ても、加害者が本当に望む相手との中での解決がなされないことがわかることから、繰り返されます。

解決がなされないならばやめればいいかという反論もあるかと思いますが、実は繰り返されるもう一つの要素がここにあります。

それは、加害者は加害行為後に内心「ショボン」としてしまうことから始まります。態度には決して出ませんが、加害行為をしてしまったという罪責感がまずあります。そしてそれと同時にもう一つ沸き上がる思いがあります。それはつまり「私は悪くない」という思いです。これを合理化と言います。

人間は「私は何も悪いことはしていない」と強く感じた時には、いま当事者が出来るやり方から、より思いの伝わる方法でこの気持ちを払拭しようと試みます。しかし手数が少ない中では、このハラスメント行為そのものが、当事者にとっては今まで行ってきた合理化に向けての行為となります。よって、依存症は、周囲から見れば「繰り返される」ということになります。

前項(1)でも述べましたが、依存症になるための必要要素である「早く」・「簡単に」・「確実に」この沸きあがる罪責感を払拭出来る方法は何かと考えた時に、同じやり方を繰り返すということになっているのです。

次項(3)では、ハラスメントに対してトラウマ体験を派生させていきます。またパワーハラスメントの中でもいわゆる「お局」という状況を例にとり、女性間のパワハラに生じる場合に加害者である「お局」が、何を欲しがって繰り返しているのかを見つめて行きます。

 

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沼田真一
川崎沼田クリニック 院長
神奈川県川崎市川崎区砂子2-11-20 加瀬ビル133 4F