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こころ、こんにちは。ブログ

    川崎沼田クリニック

ハラスメントが求めるもの (1)-カスタマーハラスメント

 
 
治療法
 

今回は、前回のギャンブル嗜癖から派生して、取返し願望を対人関係にスイッチした行動嗜癖である、各種のハラスメントについて心理分解していきます。

〇 (序) カスタマーハラスメントとは?対応策が審議中

「カスタマーハラスメント(カスハラ)」とは、顧客が企業に対して理不尽なクレーム・言動をすることをいいます。具体的には、事実無根の要求や法的な根拠のない要求、暴力的・侮辱的な方法による要求などがカスハラに当たります。

近日は店舗や会社の口コミサイトに対する無根拠な投稿に対して、政府がカスタマーハラスメントの一環として認識し、力を入れて対応策に取り組もうとしているようです。先日は中部地方の医療機関の口コミに対してカスタマーハラスメントとして、初めて賠償命令の判決が出ました。一部手前味噌になり恐縮ですが、こと医療機関が口コミサイトに対しても、集団提訴を行っているという報道もあります。

このようにかつてクレーマーと言われていたものが、今はカスタマーハラスメントという言い回しに変わり、ハラスメントの一環となりました。そしてハラスメントでわかりやすいパワーハラスメントは、暴言・罵声・無視・仕事を与えない等の厚労省認定6項目をみても、いずれも依存症の三大特徴である反復性・強迫性・衝動性を状況的にはすべて満たすため、行為の依存症(嗜癖行為)の分類に入れることが出来ると捉えられています。

〇 カスハラ加害者には壮大にならざるを得ない理想がある

そして人間関係に纏わる依存症(嗜癖)には、必ず加害者側が欲する目的や理想があります。もちろんこの目的や理想は、加害者の過去の例えば被害体験に対する払拭衝動、これを最近の言葉を用いれば「倍返し」願望のようなものから描かれるものです。

「倍返し」ですから、現実の人間関係で満足に成就することは難しいです。しかし過去の被害体験は、その後に焦点をあてがわれていなければ、このような「取り返し願望」として後日現れてくることが多分にあります。そしてこの別の場所で取り返したいという思いや理想は、「それでよかったのだと無理矢理思いこむ」合理化という心的防衛のため、創造的で次につながるものではありません。またこのようなものは当然周囲を巻き込んで行われます。

従ってその加害行為で例えば「ざまあみろ」と味わえたと感じても、これは間もなく失われ、そしてほかに手を考えられなければその渇望からまたすぐに同じ味を欲しすることにより、ぎくしゃくした行為が繰り返されることになります。

ここが依存症(嗜癖)と捉えられる流れです。依存には「渇望」の存在が必要です。

日常臨床としてハラスメント治療に携わっていると、ハラスメントの定義など表舞台で記載される項目とはまた異なり、ハラスメントの行為が必要とするもの、欲している事実や現状と心情を照らし合わせられるようになります。

憂鬱 少女

〇 依存(嗜癖/アディクション)の基本要素とカスハラ加害者対応/治療の意義

先述のようにいわゆる依存症(嗜癖行為/アディクション)は、従来から反復性・強迫性・衝動性が学術的な三要素ですが、もっと噛み砕いた条件があります。これは別項でも触れていますが、「早く」「簡単に」「確実に」という要素です。

旧来の依存症対象物であったアルコール・薬物、ギャンブル、加えて過食症などの食行動制御不十分、そして家庭内暴力 (DV) など相手を傷つける行為、あるいは反対に自分を傷つける行為など、あらゆる嗜癖対象物や対象行為には、この三つの要素が含まれていることが特徴と考えています。

このことは、加害被害関係が生じる今回の家庭内暴力 (DV) やパワーハラスメントから見えてました。昨今はこれに加え煽り運転、SNS炎上、そして今回のカスタマーハラスメント(従来のクレーマーと呼ばれるものを含む)など、傍から見れば「解決を目指さない中で、その対象に粘着する嗜癖行為」です。これらが時には事件化してクローズアップされたこともあり、依存症の性質のさらなる分解に寄与していると思います。

これらのことは加害者と被害者を両方を見つめていく中で、その裏表の一致で気付かされます。被害者のみ見つめるだけでは行き届かないところがあると確信しており、引き続き加害者治療への従事も肝要と捉えています。

 

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沼田真一
川崎沼田クリニック 院長
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