15Jun

今回は対人関係の学年を意識することに対する後編です。我々援助者側の戒めも入っています。
援助を拒む背景にある「即効性信仰」
援助者が少しずつスモールステップでの関わりを提案すると、本人は「それじゃ遅すぎる」「もっと早く効果が出る方法はないの?」と抵抗します。これは、現状の苦しさを一刻も早く終わらせたいという切実な気持ちと、自分の対人スキルがどの段階にあるかを自覚できていないことが交錯して生じる反応です。
しかし、条件の大きい方ほど即効性を求め、その分「算数」段階のスキルを身につけるプロセスに耐えられないことが多いのです。
援助者側に求められる「受け身」と「距離の確保」
ここで重要になるのは、援助者自身が自分の「思い込み」をどこまで手放せるかという点です。「自分がこうされたら嬉しいから、この人にもそうしよう」という援助スタイルは、算数に相当するような援助者の「自己理解の整理」が不十分なまま、中学生の数学問題に突入してしまう構図です。
柔道で言えば「受け身」、相撲で言えば「四股・鉄砲」といった基本動作が先なのです。この基礎がなければ、援助者自身が怪我をするか、相手に怪我をさせてしまいます。

「それは上手くいかない」と言われたとき
もしあなたが援助者で、相手に「それは上手くいかないと思う」と言われたとき、それはあなたの提案が的外れというより、「相手がその提案の意味すら把握できない段階にある」というサインかもしれません。
そのような場合は無理に説得せず、「それは中学の先生に聞いてみてください」と伝える方が無難です。ここでいう「中学の先生」とは、児童相談所、保健師、精神保健センターなど、社会的な対応や制度的援助のリソースを指します。
本人や家族が、自分の学年を正しく把握し、焦らず段階を踏んで上がっていけるようサポートすること。これが、対人援助の本質ではないでしょうか。