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こころ、こんにちはブログ

    川崎沼田クリニック

神経症の治療 : 職場の人間関係

今回のキーワードは「不安は偏りから生じる」「トラウマ(過去の影響)」などです。

 「その問題はまた起こるか?」…神経症という強迫思考

 今回は少々堅い話から入りますが、いわゆる神経症とは、脳のバイアスに基づくものです。過去の記憶に伴うこころのいたずら、あるいは勘違いに由来しているように思えます。確かに人間に限らず生物は、いずれも過去の体験によって「また同じことが起こりそうだ」という感覚を膨らませ、ある意味「危機管理」をしているとも言えますが、人間の危機管理の解釈は、他の生物と異なるところがあるように思えます。

 それは人間の「また同じことが起こったらどうしよう」は、自己体験に比べて他者体験に大きく煽られて出来上がってしまうことです。伝える側も実際は熟知・経験していない、ただたださらに上の世代から教わった「○○しなかったら、・・・になってしまう」といったような無根拠な方程式まで、つ伝えられた側は受け入れてしまう可能性をはらんでいます。

 他の生物と異なり、人間はある意味狭くて閉鎖的な「家族」という空間の中で育つ影響でしょう。 

 家族という支配関係の中で、時に極端な価値観が意味もなさないまま世代伝達され、さらに文化的な価値観にまで広がり、実際には生じる確率はとても小さくても、「○○は××に決まっている」となってしまうこともあります。これがある意味「固定観念」といわれる由縁でしょう。

神経症の治療

 上述のような「また同じことが起こったらどうしよう」という思いの払拭が、神経症全般に関する治療のポイントといえると思います。この「過去のあの時と同じことがまた起こる」確率が、いま現在の環境によくよく照らし合わせてみればとても小さいことに気付き、勇んで手を加えることなく放っておくという選択ができるようになるという余裕を取り戻すプロセスがまさに神経症から解放されることと思います。

 一方で神経症の「支障」とはどのようなものといえるでしょうか。それは、上述のように生じる確率が少ないことに神経をいつも張り詰めていることで、逆に容易に獲得できる本人にとって有益な出来事や感性を気を回せず、見過ごしや取りこぼすことにつながってしまうことかと思います。

 よって神経症というのは、例えば不安が「増す」とか「大きくなる」ことではなく、気にする視点やエネルギーの掛けどころが「偏ってしまう」ことによる不具合と思われます。

ここからは職場の人間関係を事例にします

【事例】 職場の人間関係 :  ”また同じこと” は起こりにくい

 まずここでは職場での人間関係を例に取ります。以下のように述べると疑いの目を向けられるかもれませんが、実はこと職場は「また同じ人間関係」は生じにくい空間かと思います。例えばある人が職場の人間関係が理由で一旦休職したとしましょう。休みに入って減配に行かなくなることでまずは次第に回復します。しかし時間が経過して復職を考える時期になると、当時の嫌な人間関係が蘇ってきて復職に対して二の足を踏むようになったりします。そこで会社の人事労務担当者に部署異動を願い出たり、あるいはそのまま自分の復職条件とする方もいます。また休職期間中に転職活動をしてそのまま退職というシナリオを持つ方もいます。

 これらはいずれも休職の当事者は、「また同じことになる」という危機管理に対する担保を望む動きです。しかし前述のように、あの時と同じような ”人間関係” が、復職後にまた生じる」確率は、とても小さいです。なぜなら職場の人間関係は、家族の相互関係とは異なり最終的には顧客を向いて動いているからです。きれいごとに聞こえるかもしれまぜんが、企業の先に顧客がいる限り、会社は「あのときと同じ」ではいられません。会社の人間関係は、対上司・対同僚において決して完全な対立関係になることは出来ず、「顧客に向かって同じ方向を向く」が基本構造です。  もしそれでも「あの時と同じような人間関係が起こったらどうしよう」という不安が募って復職にたじろぐ場合は、二つの方向性で考えていきます。一つは自分事情、もう一つは相手事情です。

自分事情の解釈 : 過去のオーバーラップによる不安

 まず自分に由来する伏線は、「目先の会社で生じた出来事以前に体験した過去」を考えていきます。人間関係はアレルギー反応です。過敏に考えざるを得なくなっている伏線には本人の過去が無視できません。本人は気付きませんが、「成育」や「家族」に由来することも多いです。

 この場合の多くは、場合によっては子ども時代に遡る体験に紐づいて、「また同じことが起こりそう」が反映していることが見えてきます。親からの仕込みが出来事とリンクされ、不安な想いに駆られるという仕組みを身体で覚えていき、次第に煽られない私作りを目指します。

 特に親がもたらしがちな、「そんなことしていると、また同じことになるよ」という無根拠断定的な論理展開は、子どもの脳に様々な影響を及ぼします。大人になっても過去と未来を不合理に結び付けて不安になるのが、神経症の「生成過程」なのです。

「過去と被る体験が、これから新たに起こる確率はとても少ない」… 過去を俯瞰でき、体感的に切り離せるようになることが、あらゆる神経症から脱却する礎となります。

相手事情の解釈 : その人の後ろには別の人がいる

 一方相手事情を見据えることも肝要です。この場合は「相手の後ろにいる人」を慮ります。相手事情が大きすぎ悪場合はいわゆる ”イチャモン” になりますが、相手のゆとりのなさには実は「相手自身が煽られていること」に由来します。例えば上司のパワハラは、明らかに上司側の事情です。上司側も理不尽な体験を受けたことによって、部下への ”イチャモン” につながりなります。よって「事情は何かわからないけど、何か理不尽ことがあったか。奥さんにでもなじられたか?」など、「私は知らないけれど」を頭に据えられるようになることがポイントになります。「わかろうとしては、事実がかえって見えなくなる」のです。

 特にパワハラは、目の前の相手に折り合いをつけるために行われることはありません。ハラスメントとは、得てして「とばっちり」なのです。よって「パワハラをしてくる上司が本当に言いたい相手は、実はいまここにいない別の人」なのです。「この人本当はそれを誰に言ってやりたいのかな?」がビンとくるようになると、こころの取り回しは楽に回せるようになるでしょう。

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沼田真一
川崎沼田クリニック 院長
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