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こころ、こんにちは。ブログ

    川崎沼田クリニック

職場適応障害とかつての「新型うつ病」(後)

 
 
理解できない
 

人事異動の季節になってきていることもあり、かつての新型うつ病を取り上げています。後半は新型うつ病の衝動の現代への変遷についてみていきます。

新型うつ病の特徴を考える-“エンターテインメント”な一面

この衝動は時代とともに変遷していると感じます。以前はDVや様々なハラスメント、なかでもクレーマーなど、対人的に直接かかわる中で様々な自分の鬱憤を「すり替える」方法が一般的でした。というよりも、それしかなかったと言えるでしょう。場所が家庭か社会かだけです。 

現在でもクレーマーという悩みはまだまだ社会では尽きないでしょうが、クレーマーの加害者が「解決を求めていない」ことを社会が次第に認識しつつあり、以前よりは毅然とした対応が出来るようになっているでしょう。またこれからも広まっていくと考えています。

このようなクレーマーに位置づけられる話しぶりになっていると感じる方に対しては、一歩引いてこのように考えます。「本当は誰にモノを言いたいのだろう…たぶん親かかつての誰かだろうな。しかしいまさらその相手に言えないから、代わりに見ず知らずの人に対してそのような口調になっているのだろうな…。」などとすると、世間の八つ当たりや鬱憤晴らしの伏線を想定していけるようになるでしょう。

ちなみにここで「そんなことが許されてたまるか」が優先してしまいがちな思いに注意しましょう。確かに平等意識は生きていくうえで大切な観点ですが、「相手との距離を測る必要がある時」には、自分の世間に対する平等性の要求は、冷静さを保つうえで妨げになることがあります。

ここは相手の奇妙な行為の不思議さを見ていくことが目標です。「私だって」という自分の思いを、一旦引いて俯瞰して見つめていくことが必要となります。

新型うつ病の原因を考える-暴走族と”エンターテインメント”

ちなみに、都市部では暴走族といわれる向きが少なくなってきてはいないでしょうか。この変化の理由は、いわゆる世間に伏線がばれてしまってきたからではないかと詮索をしています。暴走という興行の理由を世間が理解してしまい、現時点でのクレーマーのように世間が困らなくなってきてしまったというのがあるのではないでしょうか。

つまり「あぁ、親など近い大人に言いたいのに出来ないから、社会にアピールしているのだろうな」という当事者の心情や葛藤を、暴走族に関わっていく警察を初めとして社会に認識されてしまったと、捉えることはできないかと思っています。

社会における対人相手の激しい衝動は、ある意味「エンターテイメント」だと考えています。つまりその内情が分かってしまっては、「しらけてしまって」廃れていくと考えています。芸能活動と似ていますから、意識しているかどうかにかかわらず、仕掛けている側の裏側が周囲に理解されてしまえば、「興行」として成り立たなくなるでしょう。

実家帰省

新型うつ病の人が求めること-賛成をもらえる「演出」SNSや口コミ

ちなみに現在は、この防衛としての衝動は、SNS炎上などネット中傷や口コミなどへ移ろいで来ているでしょう。直接向き合っているわけでもないのでより演出意図を隠せますし、以前よりネット上で相手をしてくれる感覚を身に着けることも出来るようになりました。もちろん先述のかつての暴走族のように、本人すら演出意図が言語化出来ていない場合もありでしょう。

SNSや口コミの魅力は、なんといっても賛同です。見ず知らずの政治家や芸能人などに対する反対意見にしてしまえば、そのすり替えている内容ごと賛成してくれることが繰り広げられることすらあります。

しかしこの「賛同」も、SNSや口コミを立ち上げる側の「演出」です。

少し前では、実は声を上げる手段として「国会議事堂前デモ」がありました。これは奇抜なことをしても目の前の警察にとがめられることはないという子宮のような空間に支えられ、自由に叫んでいられるという構図に安心感をもらえました。つまり国会議事堂前のデモで最も必要なのは、警察がある意味暖かく見守っているというのが必要だったと言えます。

これに加えて現代のSNSなどでは、先述のようにさらに「賛同」をもらえます。これは国会議事堂前デモでは満たされませんので、よりすたれてきているように感じます。もちろんサイト側の戦略のとても重要なところといえるでしょう。しかし「その仕組みをわかられてはいけない」のです。

淋しさを抱えている場合、人は「賛成」をよりもらいたがる方向に動きます。しかし本来は心情の「すり替え」ではなく、その由縁を真摯に掘り下げていく。向き合うところに向き合える力をつけて行くことを養っていくというのが、こころの手当ての焦点になります。

こころの治療は、これまでにある考え方や捉え方に新たな発想を創って加えることによって、今までにも増して「使い分けていくようになる」所を目指しています。よってあの時の思いは「二度と消えない」「なくならない」と嘆く発想は要りません。新たな展開を培うことで、過去にまた蝕まれる危険はなくなってきます。これは死火山のような状態ともいえるでしょう。

今回は前半・後半と二回に分けて、社会構図と心情の絡みについて取り上げさせて頂きました。

 

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沼田真一
川崎沼田クリニック 院長
神奈川県川崎市川崎区砂子2-11-20 加瀬ビル133 4F