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「取引コスト」と「プロスペクト理論」を簡単に解説(前)

 
 
海岸を歩く家族の影
 

今日は「取引コスト」という用語を「プロスペクト理論」とともに解説します。キーワードは「本当に言いたい相手は別にいる」です。

取引コストを高くするトラウマと「プロスペクト理論」

取引コストとは、成就や達成をするまでの時の猶予期間です。取引コストが「低い」と表現する場合は、前々からコツコツと進め、最後に初めて成就を受け取るという流れです。簡単に例えると、受験勉強です。労働でいえば、給与がもらえるまで大抵は1か月だと思いますので、この期間が労働者が負う取引コストとなります。1か月は要求せずに努力や奉仕をするということになります。

逆に心理学で取引コストが高いという場合は、成就までに猶予を許さない状態を示します。奉仕後は間髪なく自分に利益がやってくる状態でなければ許されないという方向です。

私は時に飛行機の飛び方で簡単に例えていますが、取引コストが低いは旅客機の飛び方で、高いのはヘリコプターのような飛び方です。そこに向き合ったらすぐに成果が出ることを望むこころ状態を、取引コストが高いといいます。 この取引コストは、トラウマ体験に大きく影響していると言えるでしょう。前回プロスペクト理論 (損失とは同様の利益の二倍大きく感じる心理状態) でも述べましたが、予想外に裏切られた体験や、手のひらを返された体験が影響します。

釈然感のないまま無理矢理受け止めさせせられた体験の積み重ねにより、損失に対する感度と高さが大きくなり、取り返したい水準も客観的な元通りは目指さず、いわゆる「倍返し」を希望します。これが前述のプロスペクト理論とのつながりです。そしてトラウマとは通常「先に」味わっていますから、元に戻したい、取返したいという思いの水準は、傍からみると二倍以上を望むようになります。

カスタマー・ハラスメント (クレーマー) の心理と「プロスペクト理論」

これが簡単に言えば以前はクレーマー、現在はカスタマーハラスメントと呼ばれる事象のこころの伏線ではないかと思います。プロスペクト理論の偏りにより、「こんなところで手を打ちたくない」という思いに加え、過去のトラウマ体験の重なり(オーバーラップ反応)による過剰反応があります。

「目の前のあなたまで、私が過去に味わったことと同じことをするのか」と無意識に被害者意識が高まっています。訴えている当時者はいまの憤怒の由縁を認識できる余裕がありません。目の前の人との問題を大きく扱うことで、過去の憤怒をひっくるめて返そうとします。「そうしなければ」また私が割を食うという恐怖の裏返しからです。

ちなみに過剰な恐怖に伴う裏返し行動は、俗に「歪んだ正義感」と呼ばれるものです。

このような場合当事者が本当に言って解決したい相手は、いまぎくしゃくを引き起こしている人とは別です。通常は親など過去の重要人物です。しかしこのように「過去をまとめて取り返そうとしたがる」心の様子がトラウマの影響です。

次回は後編です。「高い取引コストの人間関係への影響」です。

「取引コスト」と「プロスペクト理論」を簡単に解説の後編はこちら

最後に

川崎市のメンタルクリニック・心療内科・精神科『川崎沼田クリニック』では、トラウマでお悩みの方の診察も行っております。下記HPよりお問い合わせください。
https://kawasaki-numata.jp

 

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沼田真一
川崎沼田クリニック 院長
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