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    川崎沼田クリニック

なぜ人は序列を作るのか : 「ドン」と取り巻きが生まれる心理

 
 
コミュニティー
 

はじめに

組織の中には、ときに「ドン」と呼ばれる人が現れます。肩書だけでは説明できない影響力を持ち、周囲がその人の顔色をうかがい、反対意見を言いにくくなる。こうした現象は、政治や大企業に限らず、一族経営の会社、医局、地域団体、家族的な職場などにも見られます。

このとき、単に「権力欲が強い人」と考えるだけでは、少し説明が足りません。むしろドンとは、父であり続けることにしがみつき、その周囲に「息子役」としての取り巻きが集まることで成立する存在ではないでしょうか。

父の価値観から自由になれなかった人

ドン化する人の背景には、「父の価値観から自由になれなかった」という問題があるように思います。

強くあれ。弱音を吐くな。

人の上に立て。家を守れ。

このような価値観を受け継いだ人は、父から学ぶのではなく、父そのものになろうとします。

しかし、父の価値観に縛られた人が全員ドンになるわけではありません。ある人は自分を追い込み、完璧主義や過剰責任として内側に抱え込みます。別の人はその葛藤を外に出し、周囲を巻き込んでいきます。ここに大きな違いがあります。

承認が比較によって与えられると、序列が生まれる

その違いを考える鍵は、兄弟間の競争です。父親から「みんなで頑張ろう」と言われた子どもと、「兄よりお前が上だ」「弟を見習え」「お前だけは期待している」と比較されながら育った子どもでは、承認の受け取り方が変わります。

比較によって承認されると、子どもは「自分の価値は順位で決まる」と学びます。能力そのものではなく、誰より上か、誰より選ばれたかが重要になる。すると、課題を見るよりも位置を見るようになります。大人になっても、何が正しいかより、誰が上か、誰の顔を立てるかが優先されやすくなります。

ドンとは、父の承認システムを組織に再現した人である

ドンとは、単に父親に似た人ではありません。父親が作った「比較による承認システム」を、組織の中に再建してしまった人です。若手を並べ、競わせ、近い者を優遇し、忠誠を示す者を引き上げる。そこでは、実力だけでなく「父に選ばれること」が価値になります。

この構造では、取り巻きもまた兄弟役になります。誰が一番近いか、誰が可愛がられているか、誰が名前を覚えられているか。取り巻き同士は協力者であると同時に、父の視線を奪い合う兄弟になります。こうして組織は、課題中心ではなく序列中心へ変わっていきます。

暴力をストップする様子

相手が萎縮すると、なぜ安心するのか

ドンには、相手が萎縮しているのを見てほっとする心理があります。これは必ずしも「怖がらせてやろう」という意識的な悪意ではありません。むしろ、相手が自分を意識していること、まだ影響力が残っていることを確認して安心しているのです。

反抗よりも本当に怖いのは、無関心です。誰も顔色を見ない。誰も相談しない。誰も報告しない。そのとき、父でいられる場所が失われます。だから不機嫌になり、圧をかけ、周囲が萎縮することで、ようやく「まだ自分は中心にいる」と確認する。これは老年期の見捨てられ不安にも近い心理です。

不正は、恐怖だけでなく恩義から生まれる

ドン型の組織で不正が生まれやすいのは、単に怖くて逆らえないからではありません。むしろ強いのは恩義です。引き上げてもらった、守ってもらった、名前を出してもらった、家を守ってもらった。そうした恩義があると、人は「それは違います」と言いにくくなります。

やがて取り巻きは、ドンを守っているようで、実はドンを中心に組み立てた自分の人生や自己価値を守るようになります。ドンが倒れると、自分の選択まで間違っていたことになる。だから沈黙する。こうして組織は、正しさよりも家を守る方向へ進んでしまうのです。

本当の成熟とは、序列から自由になること

本当に成熟した組織は、序列ではなく課題を見ます。誰が言ったかではなく、何が必要かを考えます。顔色ではなく、言葉で確認します。父の承認を奪い合う兄弟関係から、大人同士の対話へ移行できるかどうかが、組織の成熟を分けるのです。

ドンとは、強い人ではありません。父であり続けなければならなくなった人です。そして取り巻きとは、弱い人ではありません。父から承認されることで自己価値を借りている人たちです。

人が序列を作るのは、支配したいからだけではありません。序列の中でしか、自分の価値を確認する方法を知らないからなのかもしれません。

最後に

川崎市のメンタルクリニック・心療内科・精神科『川崎沼田クリニック』では、さまざまな精神的なお悩みをお持ち方の診察を行っております。下記HPよりお問い合わせください。
https://kawasaki-numata.jp

 

院長プロフィール

川崎沼田クリニック 院長
日本精神神経学会 専門医

沼田真一

平成12年、秋田大学医学部卒。
同年東北大学医学部精神科に入局後、東北会病院(仙台)嗜癖疾患専門病棟にて併行研修。
平成14年、慶應義塾大学精神科医局に移り、同時に家族機能研究所・さいとうクリニック(東京・港区)で研鑽する。
平成16年、財団法人井之頭病院(東京・三鷹)で、アルコール依存症専門病棟担当医。
平成17年よりはさいとうクリニックで、アルコール依存・摂食障害・DV(虐待)・ひきこもりなど家族問題と精神疾患に従事する傍ら、産業医としての診療や各種のハラスメントなど組織内の人間関係問題に対する相談業務を担う。

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