16Jul

今回は学校のいじめや社会のパワーハラスメント、カスタマーハラスメントなどで、時に社会で「やられる側にも理由がある」と言われてしまうところの誤解を解きます。これは心理学的に投影といい、あくまで全面的に加害者側の事情によるところがポイントです。
はじめに
職場で『まず謝ってください』『謝罪がありません』と、謝ることを強く求める人がいます。もちろん謝罪が必要な場面はあります。しかし、謝罪そのものが目的になってしまっている場合もあります。
このような例えばハラスメント場面では、訴える側は現在の目の前の相手ではなく、過去に謝ってもらえなかった相手が影響していると捉えます。
謝罪を求める心理
遅刻そのものより『謝らなかったこと』が許せない。年下の職員へ自分のやり方を繰り返し求める。一見別々の行動ですが、『自分を受け入れてほしい』『自分の気持ちを分かってほしい』という心理でつながることがあります。
私はこのような傾向を、診断名ではなく心理的特徴として『すみません依存症』と呼んでいます。相手が『すみません』と思わず言ってしまう人が、ターゲットになっている点が特徴です。
(※このようなことがあるため、時に「いじめられる側にも理由がある」という誤解を招いてしまいます。実は加害者は「 “すみません” を欲しがっている背景がある」というのが大切なところです)
なぜ謝っても終わらないのか
特に現在はカスタマーハラスメントで生じることですが、相手に謝罪を求めておきながら、相手が謝罪の言葉を出したとしても、『それで済むと思っているのか』『本当に反省しているのか』と要求を続け、終わらないところが特徴です。つまり、目先の解決に持ち込もうとはしていない、堂々巡りの流れがあります。
つまりその理由は、いまここで行われている謝罪は、自分で謝罪を欲求したものにもかかわらず、本当に謝ってほしかった相手は、過去の親や養育者など過去の重要な人物であり、その謝罪は現在の相手からは得られないことから来ています。
つまり相手が異なるので、心の中に残った過去の傷が癒えません。むしろ「その謝罪が本当に欲しいものではない」と、子どもの心が暴れ始めてしまうのです。要求事項と結果は同じでも、欲しがっている場面と相手が異なるので、「こんなのじゃない」と、加害者の頭の中で堂々巡りになるのは当然です。
これを前例にも記しましたが、思春期心性の一種から来るものです。12歳前後までに生じた、いわゆる未処理感情です。この感情は「当時釈然感のないまま受け入れた事実は、当時の感情を消し去り、後で同じようなことが重なった際に当時がオーバーラップし過剰に出現してくる」ことを意味します。
従ってやがては特にカスタマーハラスメントを受けやすい銀行員や公務員、鉄道会社の改札の人たちなどが、
「すみません、本当に言いたい相手は私たちではないのではないでしょうか」
と謝罪欲求を「思わずせざるを得ない人達」に対して言えるようになる社会が来たら、ことカスハラは少なくなってくるのではないかと思います。

まとめ : 過去の取り返しとしてのパワハラ
もちろん、すべてのパワハラが謝罪欲求だけで説明できるわけではありません。しかし謝罪を過剰に求めるタイプでは、『過去の取り返し』という視点が理解を助けます。
現在の相手を責め続けるのは、本当は別の相手に向けた気持ちが解決していないためです。『私は本当は誰に謝ってほしかったのだろう』と考えることが、人間関係を変える第一歩になることがあります。
謝罪を求め続ける人は、現在の相手を責めているようでいて、過去の満たされなかった体験を取り返そうとしている場合があります。そのような視点を持つことで、パワーハラスメントの背景をより立体的に理解できるようになります。
最後に
川崎市のメンタルクリニック・心療内科・精神科『川崎沼田クリニック』では、さまざまな精神的なお悩みをお持ち方の診察を行っております。下記HPよりお問い合わせください。
https://kawasaki-numata.jp
院長プロフィール
川崎沼田クリニック 院長
日本精神神経学会 専門医
沼田真一
平成12年、秋田大学医学部卒。
同年東北大学医学部精神科に入局後、東北会病院(仙台)嗜癖疾患専門病棟にて併行研修。
平成14年、慶應義塾大学精神科医局に移り、同時に家族機能研究所・さいとうクリニック(東京・港区)で研鑽する。
平成16年、財団法人井之頭病院(東京・三鷹)で、アルコール依存症専門病棟担当医。
平成17年よりはさいとうクリニックで、アルコール依存・摂食障害・DV(虐待)・ひきこもりなど家族問題と精神疾患に従事する傍ら、産業医としての診療や各種のハラスメントなど組織内の人間関係問題に対する相談業務を担う。







