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    川崎沼田クリニック

学校でのいじめはなぜ起きるのか:子どもたちの心理と集団の構造

 
 
いじめ
 

はじめに

学校でのいじめは、単に「意地悪な子どもがいる」という問題ではありません。多くの場合、集団心理や子どもたちの不安、承認欲求などが複雑に絡み合って起こります。本記事では、学校でのいじめがどのような心理的構造の中で生まれるのかを解説し、子どもや保護者がどのように理解すればよいのかを考えていきます。

加害者の事情をみつめる

学校でのいじめは、ニュースやSNSでもたびたび取り上げられます。
しかし実際には、いじめは突然起こるものではなく、集団の中で徐々に形成されていくことが多いものです。

多くの人は「いじめをする子が悪い」と考えます。
もちろん加害行為は許されるものではありません。
しかし、それだけではいじめの構造を理解することは難しいのです。

学校という場所は、子どもにとって小さな社会です。
そこには「立場」や「評価」があり、友人関係の中で自分の位置を確認しながら生活しています。

このとき子どもたちは、無意識のうちに次のような不安を抱えることがあります。

・仲間から外されないだろうか
・自分は弱く見られていないだろうか
・周囲から認められているだろうか

こうした不安は、大人が思っている以上に強いものです。
特に思春期の子どもにとって、集団からの評価は自分の存在価値と深く結びついています。

「スケープゴート」の例

そのため、集団の中で「弱い立場の人」を見つけると、そこに攻撃が集中することがあります。
これは残念ながら、集団の安定を保とうとする心理の一つでもあります。

心理学では、このような現象を「スケープゴート」と呼ぶことがあります。
集団の不安や緊張が、一人の人に集中してしまう現象です。

例えば、クラスの雰囲気が不安定なとき、
誰か一人をからかったり、排除したりすることで、
一時的に集団の結束が強くなることがあります。

しかし、その代償として、特定の子どもが深く傷つくことになります。

さらに近年では、いじめの形も変化しています。
以前は教室の中だけで起きていたものが、今ではインターネットやSNSを通して広がることがあります。

LINEのグループから外される。
SNSで悪口を書かれる。
見えないところで噂が広がる。

こうした状況では、いじめは目に見えにくくなります。
そのため、大人が気づいたときには、すでに深刻な状態になっていることもあります。

いじめ依存 : 加害者の事情をみつめる

もう一つ大切なことがあります。
それは、いじめに関わる子どもたちの多くが、必ずしも「悪意だけ」で行動しているわけではないという点です。

例えば、次のような心理が働くことがあります。

・自分が標的にならないために同調する
・周囲の雰囲気に流されてしまう
・からかいの延長だと思っている

つまり、いじめは個人の問題であると同時に、集団の問題でもあるのです。

そのため、いじめを理解するためには

「誰が悪いか」

だけではなく

「どのような心理的状況が生まれていたのか」

を考えることが重要になります。

子どもがいじめに関わったとき、
保護者や大人は強い感情を抱くことがあります。
怒りや悲しみ、あるいは戸惑いもあるでしょう。

しかし、そのときに大切なのは、子どもの行動の背景にある心理を丁寧に理解することです。

子どもたちは、まだ感情の扱い方や人間関係の距離感を学んでいる途中です。
そのため、集団の中で不安や競争が強くなると、関係が歪んでしまうことがあります。

いじめを防ぐためには、
「誰かを責めること」だけではなく、
子どもたちが安心して関係を築ける環境を作ることが大切です。

学校でのいじめは、決して珍しい問題ではありません。
しかし、その心理構造を理解することで、問題の見え方は少し変わってきます。

いじめを単なる出来事として見るのではなく、
子どもたちの心の動きとして理解すること。

そこから、より建設的な対応が見えてくるのではないでしょうか。

※参考文献

Dan Olweus, Bullying at School (1993)
文部科学省 いじめ防止対策推進法
https://www.mext.go.jp/

American Psychological Association
School Bullying Research

 

院長プロフィール

川崎沼田クリニック 院長
日本精神神経学会 専門医

沼田真一

平成12年、秋田大学医学部卒。
同年東北大学医学部精神科に入局後、東北会病院(仙台)嗜癖疾患専門病棟にて併行研修。
平成14年、慶應義塾大学精神科医局に移り、同時に家族機能研究所・さいとうクリニック(東京・港区)で研鑽する。
平成16年、財団法人井之頭病院(東京・三鷹)で、アルコール依存症専門病棟担当医。
平成17年よりはさいとうクリニックで、アルコール依存・摂食障害・DV(虐待)・ひきこもりなど家族問題と精神疾患に従事する傍ら、産業医としての診療や各種のハラスメントなど組織内の人間関係問題に対する相談業務を担う。

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