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    川崎沼田クリニック

ギャンブルは負けたくて行う (後)

  • 2024
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ギャンブルまでたどり着くのに前置きが長くなりました。これはギャンブル依存症が、従来のアルコール・薬物など物質依存症からはステップアップした複雑な点をはらんでいるためです。そこでギャンブル依存症には、他の依存症にはない特殊性を説明していきたいと思います。

○ 過去の「悔しさ」を重ねさせるのがギャンブル依存

さてほとんどの依存症では、「安近短」ではありませんが「早く・簡単に・確実に」導いてくれる見込みや予想が立つことが依存症対象物の魅力です。例えばアルコールや薬物といった物質依存症は、その物質の使用により使う側が予定通りに欲しがっている快楽に導いてくれます。もちろん予想通りにとれなくなって過量摂をもたらして依存症という形になることが多いのですが、そもそも依存症には「当事者の快楽の予測が立つ」ことが魅力でなければなりません。

しかしご想像の通り、かたやギャンブルでは「早く・簡単に・確実に」の快楽ではありません。それどころか、ギャンブルには俗に「負ける」があります。しかしこの失う点があることに、ギャンブル依存症の魅力であり、またかたや商売としての「はまり」を生み出す前提を作っているように思います。建前は別として、ほどほどにやる人が増えるだけでは、ギャンブルを作る側が成り立たないでしょう。ギャンブルは「はまってもらわなければならない」使命があります。

そのハマりは何が導いて生じるのか。ここは素直にギャンブルの特徴である「くやしい」という感情が一役買っているかと素直に考えます。視覚化されてわかりやすい金銭を絡ませることにより、勝ち負けという極端な格差付けを意識づけし、ここに元々の当事者の人生観や人間関係のオーバーラップさせることがハマりを持ち出すのかと思います。つまり新たな発見ではなく、過去にイメージを再び想起させることが、ギャンブル依存症の「ハマり」をもたらす原点だと思います。

簡単に言ってしまえば、「くやしさ」が「はまる」をもたらしていることになるでしょう。従って必ずしも目先の快楽をもたらすかどうかわからないギャンブル依存症の場合は、当事者の過去の「悔しさ」を含めて本意ではない体験との被りを擦り合わせ、あくまで過去の感情の再体験をしたくてハマっているという心の流れを見つめ直していきます。

このように過去につらい体験をしていると、わざわざ「悔しさ」を欲しがることがあります。これは俗にギャンブルで勝ってばかりいる人は、ギャンブル依存症にはならないことからも推論できるでしょう。

海岸を歩く家族の影

○「両極端」を求めて

ギャンブル依存症にはもう一つ、大きな特徴があると考えています。それは「両極端」という視点です。

ギャンブルはその人のお金の事情が異なり、俗に負けて金銭が少なくなる流れの中で、「途中でやめる」、つまり負けでおさめる気持ちに出来ない心理を利用するところに、ギャンブル依存症らしさがあると思います。

「極端」というからには、ギャンブル依存症とのつながりの深い疾患は、むしろ他の依存症より強迫性障害の心理があるでしょう。強迫性障害とは、完璧主義などの一義的な思考、または清潔や守備など侵されたくない状況を過度に気にする疾患です。重度になると周囲を巻き込むこともあり、「私が考えていることを相手に強いる」ことも強迫に入ります。

たとえば摂食障害という疾患の強迫心理は、自分がもし過食嘔吐をしないという代わりに、親に過度に食べさせるという場面で親が悩むという状態があります。このような場合、日本語では同じ「きょうはく」という読み方でも、強迫ではなく脅迫にもなりますね。

実は強迫性障害は、過度に気になる点へのエネルギーが高まり、強迫思考や行動に費やしているわけではありません。反対に「そここそ大切なのに」と周囲が思うところが抜けていることがほとんどです。強迫性障害は実は強い思考ではなく、あくまでどこかに力点か強くなった、偏っていった思考なのです。

 

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川崎沼田クリニック

沼田真一
川崎沼田クリニック 院長
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