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    川崎沼田クリニック

投影性同一視と心の防衛 : 「決めつけ」の心理構造

 
 
 

怒りの再演と「投影性同一視」 

SNSやGoogleレビュー、Xなどで極端に低い評価や否定的なコメントを目にすることがあります。その怒りや断定の裏には、単なる感情の発散だけでなく、心の深層で再生される“過去の怒り”が隠れている場合があります。

「投影性同一視」とは、自分の中にある未処理の怒りや恐怖、不安を、無意識に他者に投げかけてしまう心の動きです。その結果、今ここにいる医師やカウンセラーが、かつて自分を傷つけた親や教師、きょうだいの“生き写し”として感じられてしまうのです。

このとき、怒っている相手は“現在の相手”ではなく、“過去に反論できなかった誰か”。レビューや投稿が過剰になってしまうのは、実は過去の怒りが現在の関係に“投影”されているからなのです。

極端な認知と支援関係のすれ違い

このような方の中には、“話しかけてくる人=自分を犯してくる人”という思考傾向を持つ場合があります。これは、幼少期の家庭環境、特に逃げ場のない親子関係の中で形づくられることが多いものです。

家族の中では、きつく言われても逃げ場がなく、言い返すこともできず、ただ従うしかなかった。この体験が、現在の支援者との関係にも影響し、「何も言わない人こそ安心できる」と感じるようになります。

元来“前提がある人”には沈黙が有効な場合もあるでしょう。これは前提がある人は取り戻す作業となるからです。「見失っていたものを取り戻す」というのが診療やカウンセリングの目標となります。森田療法などはこのように「取り戻す」作業の場合には有効なのかもしれません。

しかしその家族関係や人間関係上の体験から、愛着が未熟で人格形成の土台が脆弱な場合、ただ黙って待っているだけでは、“種のない畑に水をやる”ような事象となりかねません。

むしろ「あなたのために言っている」という姿勢を、少しずつ丁寧に伝えていくことが必要です。これは例えは少々拙いですが、その怖さの体験から警戒心を解くことが出来ない野生猫を、安全な場所であると認識した保護猫へと誘うように、言葉を手がかりにしながら信頼を築いていく営みです。

コーヒーカップ 2つ

誤認された加害と、信頼関係の回復に向けて

「意見を言った人はつぶしに来る」「高圧的だ」という誤解が生まれることもあります。しかし、そのまま本人の想像通りに進んでしまえば、むしろ状態が悪化することも少なくありません。

たとえば数年前京都で大人数を巻き込んだ放火事件の容疑者が、自らも現場から救急搬送される時に「殺してくれ」と叫んだのは、ただ助けられることすら「自分が悪い」「迷惑をかけている」という深い罪悪感に支配されていたからかもしれません。

「助けてくれる存在」=「罪悪感を思い出させる存在」=「自分を罰する存在」という心の短絡が働いてしまうと、支援者さえも“加害者”に見えてしまうのです。

だからこそカウンセリングとは、「あなたを責めているのではなく、あなたのために言っている」という新しい関係性を築く場所であり、「他人からの助言はすべて危険」という思い込みから少しずつ脱していくための場でもあるのです。

まとめ : 「決めつけざるを得ない衝動」の解放へ向けて

この章は、「なぜ星1つをつけたくなってしまうのか?」という行動の背後にある心の仕組みを、責めることなく見つめるためのものです。過去の不本意な体験と重なり、いまが「切羽詰まった」「追い詰められた」と感じたゆえの「決めつけ」という対処は、当事者が次に向かうための流れとして、特に現在のSNSの仕組みは利用していると言えなくもありません。

SNS運営会社は建前上の出来事や告知ではなく、それこそ感情を「拡散」してもらうことが最も利益を生むことに繋がると既に織り込み済みでしょう。その感情の拡散を目指すために、様々な便利を与えながら、煽り、夢中にさせ、あるいは多くの味方を得られると想像できるような仕組みを作り、しいてはハマらせるように誘っていきます。

かたや投影性同一視や合理化、沈黙への期待、それらはすべて“あなたを守るための防衛反応”であり、それ自体が全否定されるわけではありません。ただ、その心の守りが強すぎるとき、人との関係が歪んで感じられ、必要な助けさえ“攻撃”に見えてしまうことがあります。

私たちはそのような方々に対して、「あなたに対する悪意からそのようにしているのではない」と伝えながら、新しい信頼のかたちを一緒に模索していきたいと思っています。

 

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川崎沼田クリニック

沼田真一
川崎沼田クリニック 院長
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