11May

精神科に限らず、口コミは「言葉だけ」では伝わらないもの
最近は病院やお店を探すとき、まずネットの口コミを参考にする方が増えています。もちろん、その中に貴重な意見が含まれていることもあります。でも一方で、それが本当に自分にとって参考になるかどうかは、少し立ち止まって考えてみてもいいかもしれません。
本来、「口コミ」とは人と人とのやりとりの中で生まれるもの。誰かが話してくれた経験に対して、自分が質問したり、相手の表情を見たり、雰囲気を感じ取ったりしながら、「あ、行ってみようかな」と思う——そういう双方向のプロセスが含まれているのが、口コミの本質だと私たちは感じます。
けれども、インターネット上の口コミは基本的に一方通行です。書いた人がどんな事情を抱えていたのか、どんな価値観を持っているのかが分からないまま、それを「口コミ」として受け取ってしまうと、どうしても偏った印象を持ってしまうことがあります。
このことは、精神科の口コミでもよくあるお話です。
精神科につく口コミは、あくまで来院した患者さんの主観でのコメントです。もちろん、参考になる内容である場合もありますが、全てそのまま鵜吞みにするのは良いことではありません。ひとつの意見として捉え、「自分が体験して得た感想」ではなく「他人が感じたこと」である認識を持つようにしましょう。
精神科は、口コミを見て行くことをためらうのではなく「とりあえず相談してみる」ことが大切
ちなみにメンタルクリニックや心療内科、精神科というと、少し敷居が高いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。口コミを見てさらにそう感じることもあり得ます。ですが、たとえば「服を選ぶときのアドバイザー」のように考えていただけると、少しイメージが変わるかもしれません。
私たち精神科医は、その方のこれまでの経験や状況、感じ方などをうかがいながら、その方に合う方法を一緒に探していく、そんな役割を担っています。身長や好みに合わせて服を選ぶように、心の状態や考え方に寄り添った「こころのコーディネート」を提案していくような仕事、と言ってもよいかもしれません。
「絶対に失敗したくない」という気持ちは、とても自然なものです。でもその気持ちが強くなりすぎると、逆に動き出せなくなってしまうこともあります。そんなときこそ、「とりあえず相談だけでもしてみる」という柔らかな一歩が、大きな変化につながることもあります。

精神科は「口コミ」ではなく「その場」で気づきが始まる場所
内科などでは、処方された薬を飲んで自宅で回復していくという流れが一般的ですが、精神科では少し違った形の“治療”が行われています。
診察室での会話ややりとりそのものの中に、大切な気づきや変化が含まれていることが多くあります。そして、その場ではっきりと分からなくても、後からふと思い出したり、家に帰ってから「あのとき言われたこと、実はこういうことだったのかも」と振り返ったりする中で、気持ちが動いていくのです。
これは、人と人とのやりとりの中でしか生まれない体験です。スマホの画面越しに口コミを読んでいるだけでは、なかなか実感しにくいものかもしれません。
まとめ:精神科は「試着できる場所」、口コミではなく実体験が重要
精神科は、特別な場所でも怖いところでもありません。自分に合うかどうかを、実際に確かめながら進んでいくことができる場所です。
まるで試着をするように、「合うかどうかは話してみないと分からない」という気軽な気持ちで、ぜひ一度相談してみてください。精神科医療は、そういった柔らかな一歩を歓迎する場所でありたいと、私たちは考えています。
最後に
川崎市のメンタルクリニック・心療内科・精神科『川崎沼田クリニック』では、さまざまな精神的お悩みをお持ちの方の診察を行っております。下記HPよりお気軽にお問い合わせください。
https://kawasaki-numata.jp