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こころ、こんにちは。ブログ

    川崎沼田クリニック

川崎での精神医療は・2

 
 
いじめ 加害者 被害者
 

メンタルクリニックは背景がより重要

精神科は症状や状態像を見つめること以外の要素を必要とするところとが多いです。その大きなものは、科学に準ずる以外の要素つまり個人事情を踏まえる必要があることでしょう。

不安神経症や恐怖症、PTSD、身体表現性障害など神経症圏疾患は、症状自体は確かに脳の過剰な反応で生じていますが、同じような場面に遭遇した時に誰しも同じような状態を生じるわけではありません。その違いは、個人における「前提」の違いがあるからです。

神経症は「前提」の違いにより生じる

このように精神医療とは、全般的に目先の様子が個々のどのような前提に基づいているかを掘り下げていくことが重要です。そしてその前提は、その人自身の体験と、関わってきた周囲から影響が合体して作られます。そのような前提により人は「思い込み」、あるいは極端な場合は「決めつけ」を生み出し、時に不安や恐怖という形で目の前の出来事に反応します。

つまり人は過去の出来事がリンクしたり、時にオーバーラップもありつつ、現在の出来事を解釈していく傾向が無視できません。これを学習という言い回しも出来ますが、過去の影響が重なっているわけですから、この学習は入力される時点では誰に対して純粋でも、飲み込むときにはその人の出来事に織り交ぜられているのです。つまり捉え方としては、過去の事情によるバイアスがかかっているのです。

川崎での精神医療

このような背景から、精神科では個人の前提の違いを踏まえながら掘り下げていきます。ここで川崎は前述のように多くの民族が居合わせるため、必然的に「違い」の認識は取り入れやすいと思います。

話を伺う側の私たちにもそれぞれの体験があります。従ってともすれば「ふつうはそのようなもの」と、常識と言われる価値観を取りたがってしまうかもしれません。また人間には、「自分の過去の行為は間違っていなかった」と言いたいバイアス(これを日本ではプライドというのかもしれません)に駆られます。従って全く異なる価値観が目の前に表れたときに、寄り添えない姿勢になってしまうこともあります。しかし川崎の多様性は、このような多くの前提に触れることが出来るため、日常臨床にもより「しなり」をもって携わることが出来ていると感じます。

具体例-日本企業勤務の中国人女性

ここで具体的にクリニックで何度も遭遇した印象的な例をひとつ上げます。

日本企業に勤務中の未婚の中国出身の女性の話は、妙齢になると「帰郷して結婚し、親と同居して面倒をみる」ことを両親から言われ、「中国に帰りたくない」と悩んでクリニックに来訪することが多くあります。日本で賄えられていれば親は十分子どもを評価するようにも感じますが、これはやはりあくまで日本人から見た評価なのでしょう。 (特に中国都市部以外の出身者は) どんなに優秀で活躍をしていても、郷里に戻って親の面倒を見ることが求められる傾向も少なくないようです。もちろん現在親は健康で、たとえ子どもが帰郷しなくても実損はないにもかかわらずです。

従って帰郷を強く促す親側の「前提」には、子どもが郷里に戻らないことは「親の育て方が良くなかった」という評価をもらいかねない等が背景にあるようです。一方葛藤している子ども側も、「日本で評価されているから、中国には帰れない」と日本人の親子関係のように簡単に言い返せないでいるため、子ども側にも「郷里に帰る」という考えが埋め込まれたのでしょう。このように、上に従わなければ極端にいえば反逆者になり得るという価値観があるのかもしれません。

まとめ

 このような川崎には特殊事例が多いことを踏まえると、精神医療に大切な「相手の前提に即す」ことが、より可能になると思います。援助側の価値観で「こうした方がいい」という安易な提案は少なくなり、前提に立っての根拠ある提案により近づくことが出来ているように感じます。このような前提が異なることについては、他の援助職との中でも何度も出る話です。とはいえ精神科・心療内科は特に「個人の前提」を踏まえることが重要です。この観点が薄ければ、「~した方がいい」と援助側の価値観を安易に取り出しかねません。

そのような意味で川崎は、「寄り添う」流れが自然に街の中に根付いているといえるかもしれません。

 

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沼田真一
川崎沼田クリニック 院長
神奈川県川崎市川崎区砂子2-11-20 加瀬ビル133 4F