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    川崎沼田クリニック

「面倒見文化」と現代の人間関係

 
 
足 落ち葉
 

◎記事要旨◎

「面倒見がいい」と言われる人は、今でも多くの場で好感を持たれる存在です。しかしひとつ踏み込めばその裏には、「見た分だけ報われたい」「裏切られたくない」という、情と打算の混じり合った心理が潜んでいます。

はじめに : 優しさと拘束が隣り合わせの「面倒見」

「面倒見がいい」と言われる人は、今でも多くの場で好感を持たれる存在です。しかしその裏には、「見た分だけ報われたい」「裏切られたくない」という、情と打算の混じり合った心理が潜んでいます。

この構造を象徴的に示すのが、「面倒見文化」です。ここでは、相手を助けることが生存戦略であり、同時に裏切りを防ぐための契約でもありました。助けた相手を「家族のように扱う」反面、「一度絆を結んだら裏切るな」という無言の圧力が働きます。優しさと拘束が隣り合わせにあるのが、この文化の特徴です。

蒲田・河内に見る「面倒見文化」の構造

戦後の蒲田は、町工場や下請け企業の集まる地域でした。大企業の都合に振り回されるなかで、下の者同士が団結しなければ立ち行かない。だからこそ「地切り」や「義理」が重視され、面倒を見合うことで互いを守っていたとみられます。

河内もまた、地縁・血縁・職縁が強く結びついた土地柄で、機械産業の有名企業が社屋や工場を構えるなか、権力に対して「舐められたら終わり」という意識が浸透していきました。「言いなりにならない」「舐められない」ためには、前提として組織のほころびが許されなくなってくると考えるも仕方がありません。

このように助け合いは外敵への防衛線である一方、別の視点から見れば「裏切りを許さない内部の契約」にも繋がっていきます。いずれの文化も「面倒見」という言葉の下に、相互拘束と忠誠の構造が息づいくようになっていきます。

憂鬱 少女

現代社会に再演される「見守る=縛る」構造

例に挙げたこの構造は、現代の職場にも見られます。「世話焼き」という言葉で象徴される中で発生する心理場面です。例えば職場では、世話を焼く上司や先輩が、無意識のうちに「見返り」や「従順さ」を相手に求めてしまうという心の構造です。

これは「役に立たなければ生きている意味がない」などと切迫した考えを持つ、援助者側の余裕のなさからくるものともいえます。「あれだけ手を尽くしたのだから感謝しろ」と、これまでの援助に対して未来への恩義や支配の形を帯びると、やがて関係が窮屈となっていきます。

しかしそこには、例に挙げた地域共同体のような「見守る=縛る」構造が再演されているのです。

まとめ : 真の面倒見は「共感」と「自立」の間で

今回は一つ分かりやすい例として、蒲田と河内の地域文化例を出しました。ポイントは「離れていくことは、裏切りと捉える」点です。

「面倒をみる、みてもらう」関係の中で、「”今まで”面倒見てやったのだから、”今後ずっと”裏切るな」という、以後の思想を制限して当たり前と言う面倒を見た側におりがちなロジックは、今後意識的に考える必要があるでしょう。

「今まで」の担保としての「今後ずっと」は、自己肯定感の少ない人に宿りがちな想いです。罪悪感励起からの「仕方がない (しゃあないな)」と不本意に譲ることは、遠からず人間関係を狭くしていきます。これは納得しない思いは蓄積され、その被害者は加害者と転じ、文化や常識と名を変えて世代伝達されていくからです。

これを「そういうものだろう」と捉えるには限界があります。実際に徒弟制度がある環境や、一学年でも先輩後輩関係が厳格な構造には、このような面倒見文化の反動がいまでも息づいているでしょう。

そして当事者から見ると「秩序」とみなしています。面倒見文化からの発展には、まずは援助する側に勇気が必要です。「相手が自分の手を離れていっても、関係が壊れるわけではない」という精神状態を作ることが援助する側に求められます。

このように共感と自立のあいだに線を引けるかどうかが、現代の人間関係をしなやかに保つ鍵となります。かつての「面倒見文化」が示した強さと温かさを、関係の自由と責任に変えていく視点が求められています。

最後に

川崎市のメンタルクリニック・心療内科・精神科『川崎沼田クリニック』では、さまざまな精神的なお悩みをお持ち方の診察を行っております。下記HPよりお問い合わせください。
https://kawasaki-numata.jp

 

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川崎沼田クリニック

沼田真一
川崎沼田クリニック 院長
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