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「倍返し」の魅力 (前)

 
 
いじめ
 

〇 プロスペクト理論

以前に、「倍返しだ!!」というセリフがキャッチフレーズのようになったドラマがありました。悪役や悪い組織の行動の理不尽を受け止めて、その後にひっくり返すというドラマでした。

これが流行をもたらした理由は、「プロスペクト理論」を巧みに使った応用でした。プロスペクト理論とは「損失は利得の二倍大きく感じる」という心理学的検証結果に基づく理論です。例えばある人が1000円をもらう場合と1000円を失う場合では、失ったときの思いが大きく感じられます。たとえ先のその1000円を特に努力なく貰った場合でもです。

〇プロスペクト理論を生じる主たる理由

ここには利得というものは、たとえ自分が努力なく得られたものであっても、「もらうにはもらうだけの理由があるのだ」と自らを合理化するところから始まります。人はタダで恩恵を受けることを実は嫌っています。納得がいかないからです。そこでどこからか自分なりの理由を持ってきて、1000円をもらったことを少々大げさに言えば、私の行動や経験の賜物として位置づけようとします。

このように「根拠が見つからない出来事に対しても、理由をつけて捉えていく」というクセが人間にはあります。よってこのような理由付けの癖により、反対に自分にとっての損失の場合は、「私が悪いっていうの?」という自責感の方向につなげやすくなる傾向があります。

特にこれまで家族など周囲から、自分の行動に対して一つ一つ良し悪しをつけられ、時には無根拠に理由づけられたり、あるいは理不尽な評価を飲み込まざるを得ない機会が多かった方の場合、この「自分が悪いかどうか」という考え癖が、より大きくなります。あくまで目の前の出来事が偶然の産物で、出来事と自分の言動に理由が見当たらなかったとしてもです。

昔の狂歌で「電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、みんな私が悪いのよ」というのがありましたが、様々なことを私の評価と関連付けてしまうのは、あくまで本人の事情ではなく、周囲からの支配の影響です。

従って私にとって損失する出来事があれば、「自分が悪い」のではないかという捉え方が先走り、しいては「自分の至らなさ」という思いを結び付けて落ち込み、そして落ち込みがさらに強くなりそうになれば、自ら外に対する怒りと無理矢理変えて、自分の理性を元に戻そうとするという流れが大きくなります。

〇あなたに自責感を浴びせるのは周囲の事情

このように過去において必要のない罪責感に煽られた体験が大きい場合は、特に損失体験を「自分のふがいなさ」と先走って捉えがちになるため、うなだれることが多くなります。

これは日常の対人関係で多く見受けられるでしょう。二人で話しているときに「なぜこの人はこんなことでこんなに落ち込んでいるのだろう」という場面に出くわしたら、本来は「多分この人の背景に何かあるのだろうな」と距離を置いて見つめていくことが肝要です。

実際にはこのような場面にあった際に、聞かされた私の体験に照らし合わせて「前のめり」になりそうですが、これは「その人の体験を捉えられない私が悪い」と煽られた経験が、今度は話を聞いた側にも生じているということです。

相手の体験は相手のものです。しかし「のめりこむことを是と教わる」流れを持つと、結果的には巻き込まれてしまうことがあります。この巻き込まれた時の動きは「先走り」に繋がるので、次第に相手との思いがずれてきます。最後には話し手は「私のことをわかってもらえていない」という思いに駆られ、一方聞き手側は「あなたのことを思って言ったのに」などの想いで、物別れになることがあります。

次項はこの前提を基礎として、「倍返しとは、実は4倍返し」となる心の構図について述べます。

 

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沼田真一
川崎沼田クリニック 院長
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