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こころ、こんにちは。ブログ

    川崎沼田クリニック

なぜ・どうしてを使わない理由

 
 
暴力 ストップ
 

今回はカウンセリングに関するミニコラムです。

日本語の疑問詞には裏の意味がある

私達援助職は、クライアントにその理由や由縁を問いかけるときに、「なぜ」「どうして」という言葉を使わないことが推奨されています。その理由は日本語の会話の場合、理由を問いて理由を説いていないということがあるからです。どのようなことを指すでしょうか。

お母さんと幼稚園児の子どもの会話を示します。何かお母さんの気に食わないことをした子どもに対して、母親が「どうしてそういうことするの !!」と訊いたとします。子どもは理由を聞かれたので、そのまま「だって」と言い返そうとしたら、お母さんが返す刀で「言い訳するんじゃないの!!」と返したという事例です。子どもはその勢いに押されて、そのあと何も言えずにうつむいてしまいました。

一つの例ではありますが、ある意味残念なことではありますが、このように日本語の「どうして」には理由を聞いているのではなく、理由を問わずに「やめなさい!!」という言葉が含まれている会話があります。理由を訊いているのに、理由を応えてはいけないという流れがあります。小さい子どもがこのようなやり取りを浴びせられながら、次第に「どうして?」と言われた場合は「やめろ」という禁止の意味であることを覚えていきます。日本語の言葉通りに意味を捉えると、かえって怒られてしまうという一例です。

スマホを触るドクター

カウンセリングは過去の経験を慮る

他にも日本語には「どこ見てんだよ!!」「何やってんだよ!!」など全て疑問詞の構文ですが、この場合見てる場所もやっている行動も訊いておりません。ただただ「やめろ」という意味です。日本語の疑問詞には全て言い回しによっては禁止(Must not)の陰の意味を含みます。不思議なものです。

そこで援助職は、当事者が思わずたじろんでしまう言葉や意味が読めない単語は、なるべく避けるようにしています。このような「たじろぎ」は、極端な話では虐待など「!!」(エクスクラメーション・マーク)で浴びせられたやり取りによって培われます。このように会話自体も過去の経験が由来して意味を曲解してしまう可能性がトラウマ・サバイバーにはあるため、それこそ戸惑わないような言葉遣いになっています。

ちなみにこの理由を訊く場合ですが、ごく簡単な言い回しを用いたとしても、「どういうわけで?」「どういったことで?」を使います。このような言い回しひとつをとっても、過去とオーバーラップする出来事や様子、その時の感情を慮りながら紐解いていくのが、診療やカウンセリングになります。

 

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沼田真一
川崎沼田クリニック 院長
神奈川県川崎市川崎区砂子2-11-20 加瀬ビル133 4F