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    川崎沼田クリニック

日本人とその煽られ方 ~ヒューリスティクスについて

 
 
 

「カリキュラム」に価値観を置きやすい日本人

こと日本人は、「ひとつひとつ」「一歩一歩」という考え方に親和性があります。他にも、「伝統」「元祖」「本舗」「老舗」など、「脈々と受け継がれている」ものに評価を置きがちです。こと悩み事に対する向き合い方でも、「新しい方法の模索」より「目の前のものから着実にこなす」という考え方をしがちです。しかしこと対人関係の悩みにおいては、浮かび上がったものからカリキュラムのようにこなしていくという考え方では、上手くいかないときもあるように感じます。

煽りの源泉は、上の世代の家族である

確かに、「一つ一つ着実にこなしていく」という流れは、わかりやすいかもしれません。手段も「目の前から」といった考え方はイメージしやすいです。しかし人間関係にとっては、この視点は必ずしも妥当とは言えません。

なぜなら人間関係とは、自分由来の代物ではないからです。こと人付き合い上に生まれた価値観とは、過去にその人が関わってきた人達に「煽られた」ことでもたらされたものです。つまり人間関係の悩みとは、「現在持っている価値観で、立ち往かなくなっている」から悩んでいるのです。つまり人間関係の悩みとは、その方の「レシピ不足」に過ぎません。

次に考え方が固着していく流れは、まさに習慣の繰り返しです。すなわち価値観とは、幼い頃から繰り返し煽られてきた考え方が、いつのまにか自分の価値観として捉えるようになってきたものです。「他者から教わったことを自分のものと考えてしまう」のが、こころの構造です。

日内変動

ヒューリスティクス (ヒトの考え方のワナ)

冒頭で述べた日本人の価値観として否定されない「一歩一歩着実に」というスローガンは、こと人間関係の幅を拡げようとする際には妨げとなります。上述のように人間関係の悩みは「これまでの煽り」が影響して、現在において「手不足」という結果です。よってこれを打開・展開するには、新しい風を取り入れなければなりません。しかし日本人の一歩一歩に付加される意味は、実は「自分一人で、独力での体験」が重視されてしまっていることです。これが価値観の拡大に向けての大きな障壁になっています。

さて独力で行おうとすると、どのようなことが問題になるでしょうか。それは「自分でイメージしやすいところから手を付けようとする」ことです。これを行動経済学の用語で特に、「利用可能性ヒューリスティクス」といいます。人間は全くクサビを入れないと、「どうしても自分がわかりやすいところから始めよう」としてしまいます。この点が、人付き合いでいつも同じところで悩み、進歩しない由縁です。

問題は縦に並べない~Liner ThinkingとParallel Thinking

前述の「利用可能性ヒューリスティクス」を取り入れてしまうと、人間関係の悩みの解決においては障壁になります。なぜなら「自分がイメージしやすい事柄を真っ先にイメージしてしまう」からです。自分から見えやすい人間関係上の課題を縦に並べ、「これが解決してから次に進もう」と決めます。まさにカリキュラム方式です。ところが問題を直線に並べて一つ一つ解決しようとすると、「最も扱いにくい課題を、最も目の前に持ってきてしまう」ことにつながってしまいます。

例えば「いままでの親子関係のしがらみが解決しないうちは、他人との関係は築けない」と考えて、世間の風に浴びて価値観や考え方をアップデートしようとすることを避けてしまいます。これが極端に言えば「回避性人格障害」です。「家の中で生じていることは、きっと外でも起きる」と思い込んで、閉じこもってしまうのです。

しかし、親子関係で及ぼした人間関係は、世間でそのまま再現されることはほとんどありません。社会の人間関係に触れれば、「なるほど家とは違う価値観もあるのね」を体感することが多いと思います。従って、虐待などに悩んだ子供たちが一転「親にぶつけてやけろう」というときには、まず「親と同じような大人は少ない」ということを世間の人間関係に触れて身体で認識してから、親に対して「それはあなたの考え方に過ぎない」と立ち向かって頂ければと存じます。「家族の問題を解決してから外に出る」というのが、引きこもりの長期化の由縁です。

人間関係の問題に限らず、こと伝統という言葉に重きを置き、価値観が画一的になりやすい日本人は、課題を縦に並べて取り掛かることを誉れとする傾向があります。これがLiner Thinkingです。しかしいまある事柄を横に並べ可能なところから紡ぎ取っていくことで、残った事柄が自分にとって難敵と気づきつつ取り扱っていけるようになります。このような考え方はParallel Thinkingと言います。自分にとって困った相手も、別の人間から煽られてきて今に至っているという観点がとても大切なところです。

「世間の大人は、私の親のように偏ってはいない・・・」。このことを感じ取って人間関係のレシピを増やしていくためには、親ではなく先に世間の人間関係から取り組むくことを優先します。

 

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沼田真一
川崎沼田クリニック 院長
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