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こころ、こんにちはブログ

    川崎沼田クリニック

依存症の治療対象はあくまで ”こころ” である

母親 カメラ

今回は読み物です。依存症治療が形を求めすぎてきていないかを憂いだものです。

まずはギャンブル依存症の “LOST”

ギャンブル依存の目安として、「LOST」が挙げられます。次の四つの項目です。

Limitless : 予算や時間の制限を守れない。

Once Again : 今回のギャンブルで手にしたお金を次のギャンブルに使おうとする。

Secret : ギャンブルを隠す

Take money back : 負けた時に「すぐに」取り返したくなる。

以上のうち、二つが直近一年で該当するときに、ギャンブル依存症の疑いがあるとされます。特に最後の「すぐに取り返したい」という衝動の項目は、ギャンブルの「愛好家」と言われる人たちと、数字上最も違いがあるようです。

犯罪から道徳へ : 依存症として取り上げられる視点の変遷

アルコール依存に使われてきた「CAGE」「HALT」などに始まり、本邦の依存症治療は、英語4文字をプラカードにして促していく傾向があるように見えます。今後は昨今話題のゲーム依存にも応用されてくるでしょう。しかし変わってきている焦点もあります。それはギャンブル依存とゲーム依存は。今までと違い「お金が絡む」ことで依存症として見やすくなっているという点です。

依存症の深刻度の尺度で最も優先されることは、社会に迷惑をかけているか、法律に触れるかでした。アルコール問題は、家庭での不具合が大半を占めていたので、人数は多くても問題視されるスピードは早くありません。一方、同じ物質依存でも覚醒剤を初め薬物依存の場合は、過去には「人間やめますか?」の政府スローガンまで出されるほどでした。これには当時の尺度は、家あくまで「犯罪にあたるかどうか」が重視されていたように思います。

このように依存症治療は、世論を受けて発展している面があります。

ギャンブル依存、ネット・スマホ・ゲーム依存に変遷して

このように依存症として扱うかの尺度として、「犯罪」が重要視されたのは、私ども治療者側の事情もあると思います。つまり我々も依存症に携わる関係者や啓蒙活動が必要です。その際のモチベーションが「犯罪防止」なら、スローガンにはもってこいです。犯罪というクリアカットな「錦の御旗」があれば、この業界に携わりやすかったのかもしれません。

さて近々はギャンブル依存とネット・スマホ・ゲーム依存が流行になってきています。これらを依存症と位置付けるようにすべく指標は、「浪費」となるでしょうか。これは罪ではありません。場合によっては周囲に迷惑をかけないこともあります。従来の依存症を育てた「犯罪」という視点から、次第に道徳的観点と変遷しています。 

もちろん依存症の原点である、「その行為は不本意だが、他に ”簡単に” ”確実に” ”素早く” 私の鬱憤を晴らす方法がない」という尺度が入っていれば、今度は周囲が何と言おうが依存体質とみなします。アルコールで例えると、「週に7日飲んでいても依存症とは限らないが、週に数日でも飲酒自体に不本意感を感じていれば、依存症 (正確には使用障害) とみなす」という考え方に通じています。

しかしネット・ゲーム・スマホ依存、あるいはギャンブル依存においては、我々援助者側が慎重になる必要があります。「それらを続けていると、世間が理想とするような (例えば)凛とした人間にならないよね」などという主観が入っていないかと、つまり援助者側の事情です。

特にインターネット依存やスマホ依存では、食べ物に対する依存を除く従来の依存症に採用してきた「今後一切依存対象物は使わないようにする」は、既に目指していません。「現実的に無理なところは目指さない」ことになっています。そしてこれは世間に受け入れられそうです。

しかし一歩引いてみると、この線引きは私ども援助者側の気持ちが入っていないかなと思います。特にスマホについては、使わないことが別にできないことではありません。ただの文明によって生じてきたものですから・・・。

このように依存対象の取り扱い方法に優先的に目を向ける、つまり評価対象としてしまうことにより、依存症はいつまでも「いたちごっこ」になってしまう危険性をはらんでいるのです。

憂鬱 少女

あくまで “LOST” から対人関係を見つめていく

よって大切なことは、最初に掲げたLOSTを使えば、「LOSTにみられる行動や衝動は、依存症者のどのような心持ちをあらわしているか」という視点をあくまでも忘れないことです。世間の言葉や社会的な道徳感を盾にすることは、社会や良識を巻き込みやすくはできます。しかしスローガンは当事者を無視してしまうことがあります。

このようにスローガンは簡単に言えば格好いいです。文句のつけようもありません。なぜならそもそも、「そうだそうだ」と援助者や困っている家族を賛同させるものですから…。

しかし依存症はあくまで対人関係のコミュニケーションの問題です。この点を掘り下げるには、ともすれば依存症一括りとして扱われがちなスローガンは、どの立場であれあくまで導入の一つの指標としておくことが肝要です。

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沼田真一
川崎沼田クリニック 院長
神奈川県川崎市川崎区砂子2-11-20 加瀬ビル133 4F