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こころ、こんにちはブログ

    川崎沼田クリニック

カジノでギャンブル依存症は増えるか?

普段著者が心療内科医として患者様からさまざまなご相談をお受けしておりますが、今回はカジノとギャンブル依存症について解説していきます。前半ではギャンブルが依存になるための前提、後半にかけてはカジノとのつながりを解説していきます。

ギャンブル依存症は病気なのか

そもそもギャンブル依存症というのは病気なのでしょうか?
結論、1970年代後半にWHOによって「病的賭博」という正式名称で病気と認められています。

以下引用させていただきます。

いわゆるギャンブル依存症は、1970年代後半にWHOにおいて「病的賭博」という名称で正式に病気として認められました。その後の研究によってこの病気への理解が進み、ギャンブルがやめられないメカニズムはアルコール依存症や薬物依存症と似ている点が多いことがわかってきました。このため、アルコール依存症等と同じ疾病分類(物質使用障害および行動嗜癖)に「ギャンブル障害」として位置づけられ、依存症として認められるようになりました。

ギャンブル依存症ってどんな病気?

一人でできるギャンブルでなければ依存症にはならない。

以前「カジノ( IR ) 法案」以来、ギャンブル依存症の是非がトピックになりました。日本には従来よりパチンコ・パチスロをはじめ、競馬・競輪・競艇・オートレースなど公営ギャンブルもあります。ここにカジノが入ることでギャンブル依存症が増えるかについて協議されました。どのように考えられるでしょうか。

本記事の前半部分では、従来日本にあるギャンブルとの違いを考えていきます。ちなみにギャンブル依存症の促進因子は、一人でできるギャンブルでなければなりません。なぜなら依存症は衝動行為の積み重ねで、簡単に言えば「行くぞ」という気持ちを止められないことによるものだからです。

従って他者との競争になる麻雀やトランプなど日本語でいうところの「賭け事」になり得るゲームは、直接依存症につながるようなギャンブル衝動を直接賄う性質にないので、やや世界観が違うものとして捉えていきます。

パチンコ・パチスロとの比較

まずはパチンコとの違いを述べます。

パチンコやパチスロは、金額の大小を行う側が問うことができません。確かに現在はパチンコ・パチスロにも「○円パチンコ」「△円パチスロ」と種別があり、その人の懐具合によってある程度は選べますが、どれだけ多くのお金を持っていても、反対にお金が少ない人でも、同じ種類のパチンコ・パチスロをやり始めれば、掛け金が出ていくスピードも、大当たりして返ってくるスピードも同じです。

このように金額の大小にかかわらず金銭移動のスピードが変わらない場合は、たとえ店内で「他の客との競争意識」を煽られていても、ギャンブル依存症への大きな促進因子である「一発逆転」という大きな希望を刺激し続けることには限界があります。

この「一発逆転」は、ギャンブルという媒体を選んだ人の奥底にある、「人生を取り返したい」という心の裏返しであり、希望であり、また心の鏡になっています。よってパチンコ・パチスロと異なり、掛け金が当事者の懐具合によって自由に選べてしまうカジノ (一人でレバレッジがかけられること) は、負けているときに掛け金をさらに高くして「一発逆転」を狙う気持ちを実現させる媒体になります。
ギャンブルで借金をする人はこういった心境です。

公営ギャンブルとの比較

では、既存の公営ギャンブルとの違いはどうでしょうか。レバレッジはかけられます。よって「公営ギャンブルはまさに一発逆転に希望を持つ傾向がある。既にそれがあるのだから、カジノが入ってきても依存症の程度は変わらないのではないか」という意見もあるかもしれません。しかしカジノと既存の公営ギャンブルでは大きく違いがあります。その観点の大きなものは「時間差」です。

依存症とは衝動行為の繰り返しで、いつのまにか制御不能に陥るものです。よって行動と行動の時間差が短いほど、より人をそのモノに夢中にさせることができます。例えばパチンコ屋はほぼ「毎日」営業し、客の衝動をいつも満たし続ける仕組みを持っています。

一方公営ギャンブルの場合、同じところでほぼ毎日までは行われていません。そして何より競馬でも競輪でも競艇でもオートレースでも、レース間には大きなインターバルがあります。ある人が公営ギャンブル場で実際に観戦しながら勝負をしている場合、インターバルがあることによって必ず気持ちには盛り上がりと下がりが生じます。このように公営ギャンブルの場合、どうしても気分の上がり下がりは主催者側に合わせられていることになります。

逆にいえば、公営ギャンブルはインターバルがあることによって、主催者側が客の気持ちを刺激し続けることがパチンコやパチスロよりもできにくいとも言えます。もちろん各レース場を同時開催することで、現場のレースを見ながら、間髪なくモニターなどで別会場にも賭けられることはできますが、「はしご」という形の賭けのシチュエーションが異なることを繰り返しても、ハマりこめる可能性は少なくなります。

このように公営ギャンブルの場合、パチンコ・パチスロにある「自分のペースで盛り上がる」ということが出来ないのです。一方「みんなで一緒に盛り上がる」ことも出来る公営ギャンブルは、依存症者の衝動の根底に潜む「一発逆転願望」に反するので、完全に乗ってはいきにくいのです。

このようにギャンブルとは「わが道」というのが不可避なのです。

カジノは、二つの賭け事の特性を同時に満たすことができる。

前半の項で述べたギャンブル依存症を促進する特性を一言でいうと「習慣性」・「競争」および「レバレッジ」になると思います。

ここでカジノに関して考えてみると、パチンコ・パチスロ依存症に存在する「毎日開催」および「勝っている他の客を必然的に意識させてさらに煽らせる」という特性があります。一方で公営ギャンブルに可能な「賭け金を自分の懐事情で変更でき、短時間で一発逆転が可能」という側面をあります。

つまりこの二つを併せ持つと、「いつでも一発逆転を瞬時に周囲に見せつけることができる」ということになります。これは依存症にならざるを得ない心持ちを抱えている人にとって、ある意味共通の「夢」になりえます。

空 草原

カジノは「鬱憤」をより大きく解放するように見せかけることができる。

嗜癖医療の根本は、「どうせいまの私では何をやってもうまくいかない」に対する鬱憤を払拭することにあります。よってこの治療は「治す」つまり元に戻すのではなく、「新たなモノの考えや行動の流れを身体に取り入れ、それによって気持ちや行動をその都度選んでいくことが可能になる」というプロセスです。

しかし上述した二つのハマりの特性を同時に満たすカジノの存在は、「どうだ、俺だってやればできるのだ」という仮想の自意識を、実際の社会ではないところで満たしてもらう空間になりうるわけです。
結果的にこういった心理によって借金を作り、さらにギャンブルの沼へと浸かっていってしまうのです。

ちなみにこれは「ホストクラブにハマる」流れと同じです。自尊心の低い状態にある人間にとって、ホストクラブのような流れが「ハマり」につながらないわけがありません。

このような形で「仮の満足」いわば「こころのバブル」を創り出すことができるのが、他ならぬ「カジノ」ではないでしょうか。

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沼田真一
川崎沼田クリニック 院長
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