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    川崎沼田クリニック

うつ病と見間違えやすい身体疾患

  • 2025
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海岸を歩く家族の影
 

今回は、身体疾患によるうつ状態の事例を示します。うつ病や他の精神障害ではないものです。精神科産業医をしていると、企業検診でも明確には捉えられず、身体の病気として簡単に推測できない不眠や抑うつ気分などの精神症状が多くみられます。今回は気付かないと捕まえられにくいものの、臨床的にはよくみられる三例を示します。

鉄欠乏性貧血

頻回の寝坊などで発見されます。抑うつ気分、朝起きられないなどの睡眠障害が主体です。確かにうつ病自体も「朝が弱く夕方になると回復してくる」という日内変動が特徴のため、実際には慎重な鑑別が必要です。

この鉄欠乏性貧血は、ゆっくりとヘモグロビン、血清鉄、そして貯蓄鉄のフェリチンの低下も呈します。職場検診ではヘモグロビンだけが項目で、また軽度の低下では症状を意識することが少ないです。また月経前症候群(PMS)の一つの症状として自己判断してしまうこともあります。これは鉄欠乏性貧血の進行中に、身体の恒常性が働きヘモグロビンや血清鉄がゆっくりとした低下に身体が慣れていくと感じるため、仕事などの忙しさに紛れて気づきに遅れることもあります。

勤労者にとっては、「平日休日に関係のない朝の起きられなさ」「一旦業務につけば無難にこなせる」場合があり、勤怠不安定に及ぶと「甘え」や「人格の問題」と誤解されることがあり、注意が必要です。また精神科を受診しても、抑うつ気分、意欲低下、朝の起きられなさから、うつ病、あるいは社会的な要因が症状出現に重なれば、優先して適応障害と診断されてしまう可能性があります。

特に明確な心因がない場合には次項も含めて身体疾患を考えます。「何かストレスがあるのでしょう」とされがちですが、実際には様々な精神障害との鑑別として当初から採血などはしています。

甲状腺機能低下症

身体のホルモンバランスの異常により生じる、抑うつ気分や意欲低下を呈する疾患は多岐に及びますが、特に見極めが必要なものが甲状腺機能低下症です。

甲状腺ホルモン(T3,T4)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)で主に鑑別をします。しかし微細に甲状腺機能が低下している場合もあります。この場合当院では抗サイログロブリン抗体 ( (TgAb) と抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体 (TPOAb) まで深掘りし、正常値でなければ甲状腺内科に紹介します。

明確な上述の甲状腺ホルモンの低下がみられない場合、内科でただちにホルモン投薬にはならないようですが、定期的なフォローが続きます。例えば身体が動かないものの思考力は回っていると感じる身体倦怠感の場合には、典型的なうつ病とは違うのではないかとしてこのような疾患を考慮します。

薬物療法

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrom / SAS)

睡眠障害において、寝つきは良いが途中覚醒が多い場合に考慮します。体重過多が影響している場合が多いです。慢性的な不眠のため疲れと勘違いして気付かないことが多く、当然日中の倦怠感、抑うつ気分、気分不安定につながります。

睡眠不足に伴う例えば怒りやすさとして現れることもあり、従って社会問題から繋がっている場合もあります。例えば対人恐怖でひきこもり状態ある場合に、運動不足と対人恐怖払拭目的の食事量過多により、肥満から二次的に喉に付着した脂肪が睡眠時に気道をふさいでいる場合があります。

ひきこもりの場合に元来うつ状態がある場合、新たな無呼吸の発生に気付かず、うつ病の不眠など自己判断されている場合があります。特に一人暮らしの人はいびきの指摘を受ける機会が少ないので、気付きにくいところがあるでしょう。

うつ病との違いは、眠気があくまで要因のため、よく寝た日かどうかにより意欲に違いがあったり、また慢性的な眠気のために感情が高ぶりがちで、職場など手では情報に過敏に反応してカリカリしていることなどがみられます。

耳鼻科や呼吸器科の睡眠専門外来に紹介し、一泊入院で検査後、睡眠時にマウスピースや装置(C-PAP)で気道をふさがないような工夫がなされます。睡眠薬服薬でも改善しない症例で、新たに無呼吸症候群の診断がついてC-PAPを装着した結果、そのまま睡眠薬が不要となる事例は少なくありません。

今回は代表的な三つの疾患を示しました。漫然とうつ病として捉えられている注意があります。このほかにも身体疾患由来のうつ状態には、腎機能障害や肝機能障害、男性更年期障害が隠れている場合があります。当院のような精神科でも出来る範囲の検査をして、当該科での精査の紹介をします。

 

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川崎沼田クリニック

沼田真一
川崎沼田クリニック 院長
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