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    川崎沼田クリニック

むし返す癖 : 会話におけるアディクション

 
 
 

「これで済むと思ってんの?」と、延々と責め続ける

夫婦のやりとりでよく起こりがちで、かつ注目すべきひとつに「蒸し返し」があります。文字通り「過去のほじくり返し」です。ほじくり返し方はいろいろあります。「これで終わると思ったら大間違いよ」、「まだ反省することがあるでしょ」「それでは謝ったことにならない」など…。究極は「あの時もそうだったでしょ」でしょうか。大抵は結果的に焚き付けて相手に散々謝らせた末に、このような言葉が出てきます。これに対して言われた側が、「そんなことしないよ」と返せば、「きっとまたやるに決まっている」。こういったやりとりがお延々と疲れるまで続きます。

当然このやりとり自体は、被害を受けたと思っている側が導く形で進みます。しかし問題なのは、夫婦がこのような流れを何度も繰り返している間に、その当事者たちすらこの収束しようがない会話のループに気付かなくなることです。

「むし返しアディクション」

夫婦関係には共依存が伴いがちですが、このようにひとつの話の流れにもいわば「ループ状態」が存在します。そして、お互いに不本意なのに変化することなく、釈然感のないまま繰り返されているという意味では、これもひとつの嗜癖行為 (アディクション) と言えるでしょう。

そしてこれがアディクションならば、必ず深層心理に目的が存在すると考えます。つまり物事が進展せず、ループにしておく理由があるのです。そのような観点で見れば、いつも蒸し返すように話を持っていく側の目的は、その話題自体がまとまって収束されていくことではありません。むしろ本当の目的は、いくら疲弊すると分かっていても、むしろ「話を終わらせないこと」なのです。

「責めている間は、相手は逃げない」という思い込み

では、なぜ「話を終えないこと」自体が話の目的となるのでしょうか。ここからが当事者の過去の経験によるもので、「ここで話を終えたら、その後互いの関係が変わってしまう…逃げられてしまうのではないか」と考えてしまうのです。猛烈な話の嵐が終わった後は、その後に辛辣な様子が待っている…これを子どもの頃に身体で習っていたりします。両親が「ドンパチ」している間は、両親は自分の手の届く範囲にいる。しかし終わった後は、両親が新たな動きに出る。そしてその動きは、子どもにとってはとても味わいたくないモノ…。このように、やり取りが終わることに対して怖さを抱える人にとって、「相手に対して騒ぎ続ける」ことは「おさまったら逃げられてしまう」という思い込みに対するいわば抵抗行動とも言えるのです。

このような極端な例ではなくとも、「大きなことを言う割に動かない」という夫婦は多く見受けられると思います。このような時は上述のように、「相手を責めている間は、少なくとも私からは逃げていかない」という、非常に窮屈な思い込みがあることが考えられます。言い変えれば、人付き合いで淋しさを抱えやすくなった人にとって「蒸し返して騒ぎ続ける」ことは、本人にとって数少ない大切なコミュニケーションとも言えます。

もちろん当の本人も、この言い回しから解放されたい気持ちを内心は思っているのですが・・・。

 

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川崎沼田クリニック

沼田真一
川崎沼田クリニック 院長
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