9Jan
前回の「その2」では酒の売り方を例に出しました。最後の項はまさに酒の売り方がマーケティングに沿っているのなら、なおさら治療側もそのような流れで啓蒙活動可能ではないかという前提です。
よって今後のアルコール三本柱は、まさに「自助グループ」から導入する流れも有用ではないかという見解を述べます。
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〇 自助グループは「一体感」、診察・投薬は「個別性」
さて本題の自助グループの利点ですが、「一体感」形成により、抵抗を除去することが大きな作用でしょう。自助グループ経由からの治療がうまく進む時代が来るかもしれません。
一方で「馴染み感」を得るには個別性が必要です。それが診察・投薬の役割にあたるでしょう。個別性はそれこそ個々の事情に基づいて「新たな方向を模索する」、あるいは「いつの間にか見失っていたものを取り戻す」ことを担います。
さてアルコール依存症の当事者に多く出る言葉に「どうせ…」があります。新しいことを試して失敗した時に「ほらやらなければよかったでしょ」と否定された過去が持つことが多いようです。
しかしここで大切なことは、これもまた当事者の周囲の事情に巻き込まれた結果だということです。物事をやらずに我慢してきた人々は、新しさを試す人に抵抗します。これはいわゆる「嫉妬」(より正確には「嫉み」) の一つですが、以下の二つの思いからくる葛藤です。
一つは、前述の「どうせ変わらない」です。しかしこれは「変わるな」という周囲の思いが、いつの間にか自分にもこびりついてきたものです。なぜなら最初から「変わらない」をイメージする子どもはいません。よってこの「どうせ」は、元々は周り由来の考えなのです。
つまり周囲としては「新しいことをやってもしその人が成功してしまったら、変わらなかった私はいままで何をしていたのだ…という気持ちに向き合わなくてはならなくなる」という怖さがあります。よって悩む当事者はこの周囲の人の持つ気持ちに、巻き込まれてしまっているのです。
しかし一方で、もう一つは自分側の事情です。それは「どうせ」と言って動きなく我慢した人生を既に送った人にとって、いざ今回もし新しいことを試みて成功したときに、「もっと前からやっておけばよかった」という感覚が芽生えることを避けたい気持ちです。
この二つの思いが交錯し「不本意だけれどもそのままを選ぶ」という流れにつながります。これが依存症が続く大きな要因ではないでしょうか。まさに「変わってもダメ、変わらなくてもダメ」という縛りです。
〇 自助グループは、実体のないものに感化されなくて済む
そこで両方の抵抗を削いでくれるのが、まるで客席から舞台を「のぞき込む」空間である自助グループではないでしょうか。まず当事者団体のため、最も当事者が嫌う「出来ずにいる新しい人をハプる」という前提にはありません。従って「一体感」は早めに生じます。
一方で個別事情は問わないルールがあります。前述の「早くやっておけばよかった」を嫌う意識は、実は相手と自分を比較することで感化されます。よって相手の事情が見えないというルールの中では、どこが「普通」という同調意識が感化されないので、「 “早く” やっておけばよかった」をもたらされる可能性は少ないでしょう。
よって自助グループには、実は「その人なりの基準」を尊重する要素が含まれているのです。これが次のステージへの変化への期待を高めてくれるものになるでしょう。
(最後までお読み頂きありがとうございます)
〇 追伸・余談・まとめ
ところで依存症関連でテレビに出てくる援助者は、「ハスに構えている」ように感じませんか。もちろん放送局が選んでいる仕組みですが、これはつまりマーケティングにおける花火になります。
特にアルコール依存症は「否認の病」ですから、購買理論よりもことさら抵抗除去に力を入れる必要があります。そこで花火の効果である「一体感」を与えるには、「言葉」や「しぐさ」「見た目」に「わかりやすい派手さ」が必要です。
別の言い方をすれば、ロックンロールさが必要です。
一方で実際には言い切れない事柄に「~な可能性もあります」など煮え切らない表現は、正確であってもふさわしくありません。根拠は言わずとも手段や方向性は堂々とした態度で言い切る、あるいはマシンガン・トークで熱意を感じさせるように見せる様子が、テレビでは取り上げられます。
これらはまさに花火であり、治療への引き込みにはこのような派手さは必要でしょう。一方でこと治療の流れは個別事情を掘り下げ、新しいやり方の獲得や見失っていた考え方の取り戻しを図ります。
この派手さと地味さの両輪で、回復に向け一つ一つ紡いでいくことになります。
最後に
また、川崎市のメンタルクリニック・心療内科・精神科『川崎沼田クリニック』では、アルコール依存症でお悩みの方の診察も行っております。下記HPよりお問い合わせください。
https://kawasaki-numata.jp