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    川崎沼田クリニック

ゲーム嗜癖の特徴~他の嗜癖対象との違い

 
 
理解できない
 

ゲームへの嗜癖

前述の通り、ゲームへの嗜癖が正式病名になる機運です。しかしゲームは独自の嗜癖的特徴があるかと思います。

現代のゲームの場合、依存に至るまでの背景にはネットが欠かせないと思います。そしてこのネットがあるからこそ、ことゲームには次の二つの今までとは異なる部分をもたらしています。

「仲間」がいる中での衝動行為

まず一つは、ネットが媒介しているゲームなので、依存のカテゴリーに「仲間」が存在するようになりました。いままでの嗜癖行為は、少なからずリアル社会の軋轢に疲れ、アルコール・薬物・パチンコ・食べ吐きなど当事者が「単独で」自由に行う行為が選ばれました。しかしネット上のゲームの世界は、リアル社会への不信がネットにおける社会再構築につながっています。つまり「仲間の中でゲームができるから、より夢中になる」という、旧来の嗜癖行為とは異なる様子が見え隠れします。

これは以前のバイクによる仲間との暴走衝動に似ているような気もします。現代のネットゲームにおけるバーチャルな世界は、「仲間を作りながらも自分の ”走り”ができる」という点で、より自由度が高いのかもしれません。また飽きたり、周りとぎくしゃくしたら簡単に離れることもできます。

お墓 メッセージ

課金”システム”という、人が綿密に作った嗜癖

もう一つのゲーム嗜癖の特徴は、やはり「課金」でしょう。中でも様々なアイテムを獲得するための累進課金は、行動経済学的にも依存形成を作る巧妙なシステムです。またそのアイテムで仲間との差を感じ取ることも可能になり、つまりこれは人間関係上の序列に即座に発展します。ネットゲーム上のコミュニティでいざこざになったという悩みは、もはや普通に主訴になります。

しかしここで大切なことは、ことゲームに対する嗜癖は、人がシステムとして作り上げているということです。ゲームという嗜癖商品を作るうえでは、会社は綿密にターゲットを決め、どのようにして誘導し、夢中にさせるかを真剣に話し合っているのです。つまりアルコールや薬物など「モノ」ではなく、「システム」として構築しているのです。しかもパチンコなどと違って「現場」で煽るのではなく、「煽られている自分により気付かないように」仕組まれているのです。

このようにゲーム嗜癖は強く言えば「人災」です。よって、ゲームで羽目を外してしまうということは、嗜癖になる本人が最も嫌う「人に操られている」ことそのものなのです。

ゲーム会社の「会議室」をイメージする

以上のようにネットが関わるゲーム嗜癖の二つの特徴を上げました。これらの共通項は「人を意識した結果における依存」ということです。よってネットゲーム嗜癖とは、より当事者の人間関係問題やこころの鬱憤が見えやすい嗜癖となるでしょう。

このようにゲームは現代における「創られた」嗜癖対象なので、その創っている会社の会議室をイメージしてみるようにお勧めします。「きっとこのゲームをやる人は○○な人だから、このようになったら夢中になるよ。そしてここで××を出したらきっとお金を払ってくれるって。我々は屁とも思わないけど、世の中がなかったりしてさみしい人は、△△のようにやれば絶対に引っかかってくれるって・・」などと、真剣にゲーム会社の人々は話し込みながら作っていっているのです。その場面を想像してみてください。

嗜癖行為は様変わりしています。いつも嗜癖の当時者に目を当てるのではなく、作り手側のやりとりを想像してみることも、嗜癖行為の見つめ方の一つです。課金ゲームに操られている様子が、よりわかりやすくなるのではないでしょうか。

 

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沼田真一
川崎沼田クリニック 院長
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