21Oct
本日は人間関係やあらゆるハラスメントに苦しんでいる読者様に向けて複雑性PTSD、再体験反応の対策を一緒に考えていきます。
多様化した昨今の社会の中では、人間関係によるストレスは増えてきて、多くの方が心理的な症状を抱えてらっしゃるのではないかと著者は感じております。
この記事は、心療内科医が心理学の観点から解説しているので人間関係でお悩みの方は、解決・克服の糸口になるかもしれませんので、ぜひ最後までご覧ください。
またこの記事は2022年に執筆いたしました。古い情報ではございませんのでご安心ください。
それではいきましょう。
「トラウマ」体験は日常にも生じる
俗に精神医療や心理学における「トラウマ」は、会社や日頃の業務・仕事で起きる上司の「指導」によるパワハラや日常生活でのセクハラなどの行為やそのほかのハラスメントにより心に傷を負った体験を現在の生活にオーバーラップしている様子を指すでしょう。しかしこれは何も明確な体験」として生じるわけではなく、気づかないうちに日常的に生じています。
私たちに起こる不安や恐怖などのこころの反応は、過去の体験やあなたが受けてきた言動によって伴ういわばアレルギー反応です。その反応はまさに花粉症のように、初めて身体に入ってくる時には何も感じず、その後同じまたは似たような出来事が生じた際に、身体が以前を記憶していて異物と捉え、こころが過剰反応してしまうわけです。同じ事柄に対して敏感に反応する人もいれば、何とも感じない人もいるのは、過去の体験が違うことによります。そしてこれらの体験の複合体が、その人のいわゆる人格というものを作っています。
過去に勤めている企業の上司によるパワハラやセクハラなど、その人にとって嫌なことがあって、二度目以降に同じような嫌なことが起こったため過剰反応と考えるケースが皆さんがイメージされるトラウマ反応だと思われます。ただ、このような典型例は頻度から言えばむしろごくわずかです。
実はハラスメントに対する再体験反応は、日常的に普通に転がっています。関連する言葉に「投影」や「再体験」という用語がありますが、この点を見分けていくことが肝要です。「いま感じているものは、まさに過去に被っているのではないか」とふと気づき、適切な対応を行うことで、無用に巻き込まれたり、煽られたりを防ぐことにつながります。
心理的外傷の再体験反応 : 「嫉妬」を例に
上述のような観点から、世の中で日常的によく生じる再体験反応に、「悋気」いわゆる「ジェラシー」があります。心理的外傷の再体験反応に大切なことは、目の前のきっかけ(トリガー)が、過去の事象や感情に「かぶる」「重なる」ことです。しかし過去は現時点では巣既に意識に上らず、一方目の前の事象は大きければ大きいほど夢中になり、視野が狭まります。その結果、ますます過去はその人にとっておろそかに扱われていきます。過去の所以を考えず目の前に生じた感情だけで物事を解釈することにつながり、その判断は時としてとても拙いものになってしまいます。
話を戻すと、これは何も男女関係のことだけではありません。むしろ男女関係においては全体からみれば少ないでしょう。可視化や問題化される対象になりやすいので浮き彫りにされがちですが、「嫉妬」は目の前の自分と相手、そして過去の別の人間とのつらい体験やつらい言動が含まれれば容易に生じる感情です。
現代における「マウンティング」という用語にも当てはめられます。
この言葉の意味は、見えを張って相手よりも自分の方が優位だと見せつけるような言動・行為のことを指します。この言葉が使用される機会が昨今特に増えてきているのではないかと皆さんも感じていらっしゃると思います。
自分が重要と感じる軸において、目の前に評価されると感じる人間が現れたと感じた時に生じる「身構え」がマウンティングの伏線です。自尊心が揺らぎに伴い、無理矢理潰しにかかったり、イチャモンをつけたり、仲間外れを試みるなど、揺らぎの「払拭」を目指して激しい感情と行動に苛まれます。例えば保護者会や女性だけの職場など、一般的にも想像に難くないことと思います。また、会社の日常的な業務・仕事においても生じることはよくあります。
〇周囲の煽りが続くうちに、いつのまにか自身の価値観として植え付けられる
上述の例はまさに心理的外傷の再体験で、その理由の伏線の大きな一つとして母娘関係を例にします。過去に親から理不尽や釈然感の持てない体験を多く抱えさせられ、そのうえ母の期待にそぐわないとして「出来の悪い娘」などとレッテルを張られることが長期間に及ぶと、親が勝手に思い込んでいるにもかかわらず、娘は「自分で思い込むようになった」というような勘違いを起こします。
このような流れで、「私はダメな娘」という思い込みを心の中に植え付けていきます。この植え付けが大きいまま大人の女性になり、世間で例えば目の前に「できる」と感じる女性が現れると、まるで「親が目の前の人に取られてしまう」、あるいは「またあの時のように親から罵られてしまう」といった感覚が蘇ってしまうのです。親が誰かに奪われることは自尊心の少ない女性にとっては大変な恐怖の再体験です。よって、なりふり構わぬ激しい態度でこの気持ちを必死に振り払おうとします。
自尊心の低さは、縛りの多さに由来する
自尊心は、何も恵まれた環境に宿るとは限りません。例えば裕福な環境で育ったと思われる子どもでも自尊心の低下には注意が必要かもしれません。親側に見栄・意地・面子など様々な縛りを持たざるを得ない環境であった場合、心理的外傷の再体験反応は出現しやすくなります。さらにこのような場合、「何不自由なく育っているじゃないか」というやっかみも幼少期から陰に陽に受けがちなため、「仲間外れにされるのではないか」となどの迫害恐怖を抱えていることにもなりかねません。
課題はこのような身近な心理的外相の再体験反応が、なかなか世間では露呈しないことです。「高飛車」「傲慢」という言い回しが先行し、その方が抱える恐怖の源泉まで考えが及びにくいことが、本当のこころの叫びを捉えることを阻んでいることがあります。
こころの淋しさは、一見世間で羨ましいといわれる環境でも十分起こりうることです。
そうならない対策として、「どうしても自身で解決・対応しきれないかもしれない」「これは誰かに相談する必要がある」と感じられた方は他の人に相談してみてください。
人間関係でお悩みの方へ
人間関係でのストレスは企業内や家庭、友人関係などさまざまな環境で発生します。
また下記の記事によると、特に職場での人間関係に関しては、2022年にアンケートを取った結果、26%の方がストレスに感じていると答えています。
下記の記事では著者が考える人間関係の考え方について解説しておりますのでぜひ一度ご覧ください。
『人間関係は運転である』
当ブログではさまざまな心理的なお悩みをお持ちの読者様に向けて心療内科医による心理的な視点からあらゆる事象に関して解説しています。
当記事以外でもお役立ちできる内容だと思いますのでぜひ他の記事もチェックしてみてください。
また、当ブログを運営している川崎沼田クリニックでは、こころのお悩みを抱える患者様の治療やカウンセリングを行っています。川崎市、もしくは周辺地域にお住まいの読者様の中で、「過去に受けたハラスメント忘れられない」などのお悩みがございましたら、下記のリンクが当院の公式ホームページになりますのでまずは一度ご覧ください。
https://kawasaki-numata.jp/
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