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こころ、こんにちは。ブログ

    川崎沼田クリニック

「へこませて従わせる」- 家族に学ぶ無意識

 
 
暴力 ストップ
 

今回は、家族という閉塞空間だからこそ通用するやり取りについて述べます。家族で問題ないと思った言い回しを無意識に他人に行うことで、ハラスメントなどあつれきにつながっています。

「どうしてそういうことするの?」という言い回し

以前保健所で依存症相談を担っていた時に、相談者だけでなく担当の保健師などスタッフ側からも家でよく使ってしまうので気を付けなければとされた言い回しがあります。それは「どうして (なんで) そういうことするの!!」という表現です。

 このフレーズのポイントは、「どうして」と訊いて「理由」を求めていないところです。例えば母親が子どもの行動に対して「どうしてそういうことするの?」と勢いよく言うとき、子どもがそのまま受け取って「だって…」と理由を言おうとしたら、「言い訳しないの!!」と言われてしまうことがあります。「どうして」と訊いているのに、「やめなさい」と禁止を最初から意味しているのです。よって子どもなりの理由があっても取り上げられなくなり、力のない子どもは黙って従うことが唯一の選択肢になってしまいます。

このように本来の日本語の意味が飛んでしまうやりとりが、戸惑いにつながります。

「~しないの?」

このように単語本来の意味とは別の意味を覚えさせられた子どもは、「意見を合わせることは波風を立てる」と考えることが優り、その結果周囲にも回りくどい言い回しを使いかえって軋轢を生むことにもなりかねません。

例えば、「~しないの?」という言い回しです。表面的には意見を訊いていますが、場面によっては「それでいいと思っているの?」と責任を問われているようにも感じます。この場合同様に「やめろ」と禁止を問われているような言い回しです。

ちなみに世間の「マウンティング」という流れも、このような軋轢が生じる怖さから次第に間接的にモノを言うようになった副産物とも言えるでしょう。

罪悪感を持つと拡げたくなる : ハラスメントへの影響

これらに共通なのは、「相手をへこませて従わせようとする」という思惑です。しかしこのような「罪悪感を持たせて支配させる」やり方は、そもそもは絶対的な支配関係にある親子関係からしか覚えていけないところです。それが世間に広がっていくのです。

幼い頃から言葉本来の意味とは違う意味合いにさらされると、知らないうちに本人も気づかないうちに軋轢を呼ぶ言い回しを使っていることにもなりかねません。コミュニケーションとは学習ですから、環境から受けた方法を無意識に別の人に伝えています。

このように「相手に罪悪感を芽生えさせて従わせる」ことは、上下関係がある相手との支配関係を固定化させるのにある意味もってこいです。しかし罪悪感を持った人間は、そこで味わった気持ちを別の人間にも伝えることで心のバランスを取ろうとします。加えて罪悪感を持たせるやり方も自分で体験して覚えていることから、社会におけるパラーハラスメントに繋がる要因にもなります。

ちなみに私は子供に理由を問う際には、「どうして」「なんで」の代わりに「どういうわけで」という言葉を用いるように親御さんに提案しています。

 

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沼田真一
川崎沼田クリニック 院長
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