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    川崎沼田クリニック

トラウマ治療のゴール(前) – 極端さを手放す

 
 
スマホを触るドクター
 

本日のテーマは、精神科・心療内科の日常診療でよく訊かれる「トラウマ治療のゴール」についてです。

火山の噴火口に蓋だけしても、かえって下のマグマが熱くなるだけ

当メンタルクリニックでは、虐待やDV、ハラスメントやいじめ体験など、様々な家族及び人間関係に伴うトラウマに伴う疾患を扱っています。そこには様々な症状として現れる方、症状に出ないようにアルコールなどの物質やリストカットなど、辛さを目に前にすることを避けるための衝動行為として表面化する方、あるいは家族関係のぎくしゃく事態の相談という形で来院する方といます。

私はこの流れを火山として例えさせてもらっています。つまり火山の爆発は症状や衝動として現れたものです。その火山の頂上に薬物などで蓋をすれば爆発自体は一時的に止まりますが、下にはマグマがよどんでいるため、その火山を止めれば同じマグマから出ている別の火山が噴火します。つまり一つの目に見える状態像だけに目を当てていては、別の形として出てくるということです。

時に「クロスアディクション」といって、抑うつ気分も騒ぎもリストカットも摂食障害もあるという場合があります。火山の噴火があらゆる方向から出るわけですが、考え方を変えればマグマの流し方(=ストレスの解き方)を多数持っているといえます。アディクション自体が酒なら酒、ギャンブルならギャンブルだけなどと得てして一つに固まりやすい性質を持つ中で、クロスアディクションを呈する人は、いろいろと技を持っていると捉え、それらの技の「使い分け方」を学んだ経緯を掘り下げていくことが治療になります。

いま「使い分け」という言い回しをしましたが、実はこれが治療の結語と言っても過言ではないと思います。そもそも何も火山の爆発を起こさない人つまり精神的に健康が維持されている人というのは、この使い分けが、アディクションではなく「モノの考え方・捉え方」に対して出来ている様子を指すのではないでしょうか。

コーヒーカップ 2つ

トラウマの影響 – 極端な考え方に “ならざるを得ない”

特に「見捨てられ不安」「両極端な考え方」「私って何なの?」という三つの特徴と、これらの考え方に囚われすぎないよう回避する様々なアディクションを持つ「境界性人格障害 (Borderline Personality Disorder)」の方は、得てして急かなくてもいい所で急いています。これはトラウマの影響と言わざるを得ません。

何しろ人間関係上のトラウマとなる体験の主な要素は「待ってくれない」ところであったからです。猶予を持たせてもらえていないのがトラウマ体験です。「ゆっくり考えて、選びながら答えを出す」ということを封じられているのが、上記虐待やハラスメント、いじめなどの特徴です。従って人間関係上のトラウマを有する人の多くが抱えているのが「急く」というある意味勘違いです。

一方近頃は、スマートフォンの台頭でこの対人関係トラウマを抱える人の「急き」を満たすツールが増えました。その影響か「急く」気持ちをまた急いで拭き取ろうする手段である大量服薬や自傷、あるいは食べ吐きを、現代は必ずしも真っ先には考えなくて済むようになりました。

これは「いいね」をそれこそ「急いで」頂けるくらいに進化したネットやSNSの台頭で、極端な書き込みや炎上という攻撃が代替手段として使えるようになってきたともいえるでしょう。 (一時期のmixiや2チャンネルでは、短時間で自分の書き込みに対するリアクションがもらえないので、不安や極端な考え方を瞬時に回避したくなる衝動には、見合わなかったといえるでしょう)

(後半へ続きます)

後半記事はコチラ☞ トラウマ治療のゴール(後) – 極端さを手放す

 

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沼田真一
川崎沼田クリニック 院長
神奈川県川崎市川崎区砂子2-11-20 加瀬ビル133 4F